信頼関係を築くための共通点探し

「コミュニケーションがうまい人を一言で表すと、『ラポール(信頼関係)』を築くのがうまい人。そして、短時間でラポールを築くコツは、共通点を素早く見つけることです。コミュニケーションがうまい人は、会話の中で出身地を尋ねたり、趣味や好きな音楽、映画、スポーツ、本などについて質問して、相手との共通点を見つけようとします」

 共通点探しは、敵と味方を見分けるための大切な能力で、遺伝子レベルでプログラミングされている。言語を持たなかったはるか昔の我々人類は、見た目や声のトーンの共通点で敵か味方かを判断していた。

 それゆえ、人は相手と共通点があると「味方だ!」と、遺伝子レベルで判断して嬉しくなるのだそうだ。

「ただし、これだけでは普通にコミュニケーションがうまい人の域を出ません。みなさんの周りにいる、なぜかすぐに人に好かれたり、絶大な信頼を得ていたり、カリスマ性があったりという、コミュニケーションの達人レベルの人は、会話以外のところで共通点を『作る』能力に優れています。

 それが、ボディランゲージや声の使い方。すなわち、非言語コミュニケーションの共通点なのです」

 非言語コミュニケーションで、共通点を作る……。今まで想像したこともない、まったく新しい考え方の連続に、しばし呆然となる参加者たち。

「難しいことではありません。誰でもやってます。たとえば、6歳の子どもや90歳のお年寄りに対して、どう接するか。コミュニケーションの達人は『でちゅねー』と言葉を合わせるだけでなく、子どものような高いトーンの声で話したり、首をかたむけたり、手をかわいく動かしたりして、子どもと非言語の共通点を作り出しています。

 お年寄りが相手なら、ゆったり構えて、スローペースに話す。これも非言語の共通点を作っているのです」

 言われてみれば、確かにそうだ。幼稚園の先生や介護施設の職員は、みんな非言語で相手に合わせている。そんな専門職ではなくても、コミュニケーションの達人は、言葉に頼らずに人と仲良くなれる。それは、ボディランゲージと声のトーンやペースで共通点を作っているから

 そして、そのスキルこそが、モノマネの天才バンドラーが創設したNLPの技術、『ペーシング』なのである。いよいよ、「アゴ合わせ」の実習が始まる――。

 

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