問題の最大要因は「60歳定年制」
同一労働同一賃金、解雇の金銭解決ルールが必要

 日本の高齢者の活用を妨げる最大の要因は、大企業を中心とした60歳定年制である。多くの先進国では、同一業務でありながら年齢だけを理由とした解雇は、人種や性別によるものと同様に「年齢による差別」として原則禁止されている。しかし、日本では、年功賃金と定年時までの雇用保障という慣行が、年齢による差別を不可欠にする主因となっている。このため同一労働同一賃金の原則と、画一的な雇用保障の例外として解雇の金銭解決ルールの導入により、企業が安心して定年制を廃止し、貴重な高齢人材を活用できる環境を整備することが、本来の政府の責任となる。

 今回の働き方改革法でも、同一労働同一賃金の原則は示されている。しかし、勤続年数が長ければ、それに見合った高い賃金でもいいという抜け穴が残された。また、企業の同一賃金についての説明義務も設けられたが、それは労働者が納得しない場合の措置はない。

 やはり欧米企業のように、「同一業務の他の社員と比べて不利に扱われている」という社員からの訴えに対して、企業側に「差別をしていない」という立証責任を、人事資料等を用いて果たすことの義務付けが不可欠となる(参照:「働き方改革が目指す「同一労働同一賃金」はなぜ実現しないのか」)。これは公害対策基本法で、被害者の訴えに対して、工場側が公害を出していないという立証責任を負うことと同じ原則である。

 もっとも、日本では企業内の訓練投資を円滑に行うために、ある程度の雇用保障・年功賃金が必要という論理もある。しかし、今後の長期的な低成長時代に、60歳まで頻繁な配置転換を通じた企業内訓練を漫然と続けることは、明らかな過剰投資である。遅くとも入社後20年以内に、それまで経験した業務の内で、もっとも自分に向いた職種を選び、それに見合った賃金を受け取る。そうすれば、企業にとっても60歳という一定の年齢で、画一的に解雇する必要性はなくなる。現行の雇用慣行を全面的に変えるのではなく、欧米の職種別の働き方と組み合わせることが、本来の働き方改革である。