フランドルとオランダの静物画の違い

 ちなみにユニークな点として、元々は同じネーデルラントでありながら、スペイン領であったフランドルと独立を果たしたオランダでは、それぞれカトリックとプロテスタントという別の文化圏を形成していったために、静物画も表現が大きく異なっています。

 たとえば、フランドルの静物画では、食物はカトリック文化圏らしく豊穣なライフスタイルを象徴するように豪奢に扱われています。そして絵画のサイズも、絵画の購買層の裾野が広がったオランダとは違い、同じ静物画でもオランダのものに比べて大きめなのが特徴です。

フランス・スナイデル『テーブルの上の果物』17世紀フランドルの静物画。節制が求められるプロテスタントとは違い、カトリック文化圏らしく、食物が豊饒なライフスタイルの象徴として豪奢に扱われている(フランス・スナイデル『テーブルの上の果物』1650年頃、72×103cm、エルミタージュ美術館)

 また、花瓶に活けられた花も、フランドルのものでは植物図鑑的にさまざまな花を愛でるものとして好まれました。そして、春や夏など違う季節のものや、庭で育てる園芸品種と同時に野に咲く花など、植物図鑑的に花々が重ならないように並べて描かれているのです。

 このように、同じ静物画でも国によってその特徴は大きく変わってきます。拙著『名画の読み方』では、その他スペインやフランスの静物画にも触れながら、その読み方を解説しています。ぜひ、こちらもご参考いただけますと幸いです。