読者の皆さんはそれぞれのケースについて、どんな選択をするかじっくり考えてみてほしい。それぞれの選択肢にメリットとデメリットがあり、簡単には結論が出せず、相当に頭を悩ませずにはいられない問題といえるだろう。

 ワラックたちの実験結果を見たところ、12 問のいずれにおいても、集団で決めた場合の方が魅力的だけど、リスクのある選択肢を選ぶ傾向が確認された。

 先ほどのケース1の場合、1人で考えると高給とはいえないものの、雇用が保証されている今の職にとどまるといった判断を下しがちだが、みんなで話し合うと、雇用の保証はないが高給取りになれる可能性のある仕事に思い切って転職するという割合が高まる。

 ケース2の場合、1人で考えると手術の失敗を恐れ、手術を回避する選択の比率が高くなり、みんなで話し合うと、手術によって不自由のない生活を手に入れられる可能性に賭けてみるという選択の割合が高まる。

 さらにケース3の場合でも、1人で考えるとリスクを考慮して国内にとどまるという選択をしがちだが、みんなで話し合うとリスクをものともせずに発展途上国に進出して利益の伸びを追求するという選択の割合が高まる。

 このように、みんなで話し合うことによって、私たちはリスクを恐れず大胆な結論を下す傾向が高まるのである。

みんなで話し合うと、
リスクを恐れなくなる心理は?

 集団で話し合って決めると、なぜリスキーな判断になってしまうのか。

 その理由としては、みんなで決めると気が大きくなること、そして「責任の分散」心理が働くということがある。

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というフレーズを聞いたことがあるだろう。これは1980年の流行語にもなった言葉で、1人の時よりもみんなと一緒の時のほうが気が大きくなり、大胆なことをしてしまいやすいというのは、よくあることだ。調子に乗って悪ふざけをして大問題になり、「なんであんなことをしてしまったのか、よくわからない」と後悔するような場合にも、こうした心理メカニズムが働いている。