「アメリカは『中国製造2025』と『一帯一路』構想によって、世界の産業が中国企業に独占されることを憂慮している」(中国の研究者による論文)ことは疑う余地もない。

 他方中国も、アメリカを中心とした「西側の市場経済システム」に組み込まれることにあらがう。「中国製造2025」の先にあるのは、習近平の政治理念である「中国の夢」だ。

 中華民族復興という野望が実現するとき、西側の普遍的原理である経済的自由主義は危機にひんし、“高品質で安価な中国製”の氾濫で地元経済は破綻に追い込まれ、国民は路頭に迷う。それをよしとしない経済大国1位のアメリカは、2位の中国をこの貿易戦争で徹底的に抑え込む構えだ。

収益が上がればそれでいいじゃないか

「“中国の大きな傘”に入ろうと入るまいと、日本企業の収益が上がるならいいじゃないか」――ある経済団体の幹部からはこんなコメントが漏れた。おそらくこれが今の日本の経済界に共通する考えだろう。GDP世界3位の日本の悲しき選択である。

 安倍首相の北京訪問に見る日中首脳会談は、「山あれば谷あり」を繰り返してきた日中のビジネス環境で、ようやくたどりついた転換点だ。冷却期間の真っただ中で、中国企業訪問の“アポ入れ”すら困難だった状況を思えば、関係改善は確かに日中のビジネスに弾みをもたらすに違いない。

 しかし一方で、「今回の首脳会談は外交的敗北だ」とする声もある。上海の現地法人で10年にわたり総経理を務める日本人はこうコメントする。

「安倍首相は、最後の最後まで取っておくべきだった『円の国際的信用力(今回合意した通貨スワップ協定)』と『日本の国際的信用力(一帯一路への協力)』の2枚のカードをあっさりと切ってしまった。これで『一帯一路』構想に“お墨付き”を与えることになったが、果たしてそれでよかったのだろうか」

 新たなステージでの日中の関係は従来とは異なる。それは、私たちに、日本は“中国の大きな傘の下”で商売をさせてもらうという「時代の変化」をも突き付けるものだ。その“傘の下”に入る覚悟をしさえすれば、確かに日本企業の商機は広がるだろう。だがしかし、それが「真の意味で国民の利益にかなうのか」はまた別問題だということを、私たちは知る必要があるのではないだろうか。

(ジャーナリスト 姫田小夏)