現在、日本の高血圧患者は約4000万人、うち何らかの治療を受けている患者は、およそ800万人と2割にとどまっている。自覚症状がないだけに「何とかなるさ」派が多数を占めるらしい。
しかし一方で、生活習慣を改善し、利尿薬を含め3剤以上の降圧薬を飲んでいるのに、目標の血圧まで下がらない「治療抵抗性高血圧」と呼ばれるグループも存在している。投薬治療中の13%が該当すると推測される。
毎年5月17日は「高血圧の日」。この日にあわせ世界8カ国で実施された治療抵抗性高血圧に関するアンケート調査(メドトロニック社提供)によると、日本人の治療抵抗性高血圧患者の9割が高血圧を「精神的負担」と感じ、健康への悪影響を懸念している。
小山市民病院の島田和幸院長は「治療抵抗性の高血圧には肥満や睡眠時無呼吸症候群など、血圧が下がりにくい状態にある場合と、慢性腎臓病やホルモン分泌の異常を背景に血圧が上がる“二次性高血圧”のケースがある」という。もし3剤以上の降圧薬を服用していても、上の血圧が130mmHg以上、下の血圧が85mmHg以上の状態が続くなら、一度専門外来で「セカンドオピニオン」を受けてみよう。治療戦略を見直すことで好転するケースもある。海外では薬物治療以外に、体液量に反応して血圧上昇に働く腎臓の交感神経を焼灼する治療が試みられている。足の付け根からカテーテルを挿入し、先端から高周波電流を流して神経を熱凝固させる方法で、治療後1年間、降圧効果が持続すると確認されている。国内でも数社が治験準備中だ。
高血圧の厄介な点は「診療所で測定した血圧が必ずしも病態を反映しないこと」。たまたま目標値以下だった場合もあり得るわけ。やはり血圧を管理するには「朝夕の2回、家庭で血圧を測る」のが一番だ。最低でも5日間測れば、治療抵抗性高血圧の診断に役立つ情報が得られる。「高血圧の日」を機に、家庭用血圧計を購入するのもいいだろう。その際は上腕式がお薦めだ。家庭血圧の目標値は125/80mmHg未満である。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)