また、韓国、台湾と日本の賃金格差も、アベノミクスによる円安の進行でなくなった。日本の最低賃金をドル換算すると、月額で約1060ドルで、ソウル、台北の賃金と変わらない水準となった。その結果、高い人権リスクを冒してまで日本で働くよりも韓国や台湾へ行こうと考える出稼ぎ労働者が増えている現状がある。災害や五輪で人材の需要があっても、簡単に集められない状況なのだ。

外国人労働者の人権保護対策が
強行裁決後に「例外」で骨抜きの悪夢

 安倍政権の入管法改正が、現行の外国人技能実習制度の人権侵害問題と、海外との人材獲得競争での劣勢を多分に意識したものだということは明らかだ。

 新たな在留資格「特定技能」を2段階で設けている。「特定技能1号」は、最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格する「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人が得られる資格である。滞在期間は通算5年で、家族は認められない。

「特定技能2号」は、さらに高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ人に与えられる資格である。1~3年ごとの期間更新が可能で、更新回数に制限がなく、配偶者や子どもなどの家族の帯同も認められる。10年の滞在で永住権の取得要件の1つを満たし、将来の永住に道が開ける。一方、受け入れ先機関が外国人労働者に日本人と同等以上の報酬を支払うなど、雇用契約で一定の基準を満たす必要があることも法案に明記されている。

 菅義偉官房長官は、「外国人が働く国を選ぶ時代になったと認識している。外国人が働いてみたい、住んでみたいと思える国を目指す」と発言し、「(1)自治体における相談窓口の一元化、(2)日本語学校の質の向上、(3)外国人を受け入れられる医療機関の体制整備、(4)保証金や違約金を徴収する悪質な仲介業者の排除」の検討を表明している。

 しかし、安倍首相は国会答弁で再三にわたって「移民政策ではない」と強調している。これは、安倍政権のコアな支持層である「保守派」(第144回)を意識した発言であることは明らかだ。保守派の圧力に配慮すればするほど、「労働力」としての外国人単純労働者受け入れ制度の導入をなんとか通そうと焦り、いつものように国会答弁がいい加減になり、さまざまな問題が何も修正されないまま、強行採決で法律を通してしまうことが懸念される。

 その上、外国人労働者の人権保護対策等は、菅官房長官が言及したように、法律が成立した後に検討されるのだろう。その時は、声が大きいが少数派に過ぎない保守派以上に、外国人労働者を低賃金で使いたい中小企業の支持を受ける自民党のほとんどの議員が、なんだかんだと理屈をつけて、「例外事項」を設けるために動くだろう。人権保護対策は、実質的になにも整備されないまま、新しい制度が動き出すことになる。