自分のつながりを見つめ直す
今年のお彼岸はどのように過ごされましたか。
家族そろってお墓参りされた方、お仏壇に故人の好きだったものをお供えしたご家庭、一族の系譜を改めて確認された方など、さまざまな偲び方があったことと思います。
日本の仏教は中国大陸と朝鮮半島を経由して伝わり、伝播の過程で中国の儒教的な要素がだいぶ加わっています。原始仏教にはなかったもので、その最たるものが祖先崇拝、先祖供養の考え方でしょう。
以前、仏教のテーマは「いま、ここ、自分」だとお話ししました。それとこれとは話が少し違うのではと思われてしまうかもしれませんが、上の標語にもあるように、「ご先祖なしにはいまの自分も存在しない」という理に、感謝の気持ちを持ちたいものです。これは縁起という考え方にも通じるものです。
ネット社会のつながり方
地域のコミュニティが希薄になりがちな現代社会では、一方でインターネットを通じた関係性の生活に占める割合が高まっています。SNSと略されるソーシャル・ネットワーキング・サービスでのつながりはその典型で、新たな人間関係を築いています。
ネット上でのつながりはヴァーチャルなものですが、リアルな交流が持たれるのが「オフ会」です。
「お墓参りはご先祖様とのオフ会」という標語は、自分がお参りするという具体的な行為を通して、ご先祖様との関係をリアルなものとして感じる姿を切り取っています。まさに今風なご先祖さまとのつながりですね。
「おじいちゃんは今どこにいるの」と幼児に尋ねられた親が、「クラウド」と答えているのを見て笑ってしまいました。テクノロジーが発展して呼び方が変わっても、連綿たる命のつながりが変わることはありません。命のつながりをリアルに感じる瞬間をもちたいものですね。
(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)