スポティファイ、アップルミュージック、そして2018年11月に上陸したユーチューブミュージック――。音楽産業ではすでにいくつもの巨大なサブスクリプション型サービスが生まれている。産業構造は大きく変わり、12年からサブスクリプションの売上高は前年を上回り続けている。サブスク化によって激変期にある音楽産業の現在と歴史を、作家で音楽産業の配信サービスについて詳しい榎本幹朗氏に聞いた。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
2019年、サブスクは
キャズムを超える
――音楽業界はもっとも早くサブスクリプション(定額制サービス)の波が押し寄せた業界ではないかと思います。すでにスポティファイ、アップルミュージック、dヒッツ、ラインミュージックなど、ストリーミングで音楽を視聴できるサービスがたくさんあります。そこにユーチューブミュージックが今年11月に上陸しました。ユーチューブミュージックはどう評価されていますか。
特に「すごい」とか「革命的だ」みたいなのは、さすがにないです。やっぱりもう後発なので。若者からしても、980円とか1180円は高いなって捉えると思います。だから、まだピンと来ていない状態だと思いますね。そのうち、学割を始めると思うので、そのタイミングになったら若者に広まってくるでしょう。学割は他のサービスも始めていますから。本格的にユーチューブミュージックの評判が聞こえてくるのは、そのタイミングだと思います。
――世界的にサブスクリプションが音楽業界の産業構造を激変させている一方、日本の音楽産業は特殊で、まだ約8割がCDやレコードなどの売り上げです。
日本レコード協会の統計を見てみると、サブスクの売り上げは順調に伸びています。世界と日本の動向は今年ぐらいからリンクし始めていまして、簡単に言うとCDの売り上げは下がって、アイチューンズストアなどのダウンロードの売り上げも下がって、サブスクだけが伸びているという状態です。
5~6年遅れで、世界の音楽市場が辿った道を日本も歩んでいます。このあとしばらく、サブスク売り上げについてはゆっくりと成長していくと思います。