パソコンを全学校へ普及
プログラミング教育もスタート
すべての学校にパソコンを配備してインターネットを接続する――。
パソコンの価格が平均月給の4〜5倍する時代、エストニアの学校にパソコンとインターネット環境を整えようと、1996年に発表されたのがこの「タイガーリープ」と呼ばれるプログラムであった。独立して数年しかたっておらず、経済が安定していない当時の状況を考えると、これは国家として大きな決断だった。
だが、この決断は大きな果実をもたらす。パソコンとインターネットの普及がどんどん進み、その後8年間で、コンピューターサイエンスの授業が全学校の84%にまで入ることになった。
エストニアの子どもたちにとっては、パソコンやネットが身近なものとなり、中にはホームページの作成やイーコマースサイトの開発などを行う生徒も出てきた。
2012年からは、プログラミング教育が始まり、まずは20ほどの学校で試験的に導入された。結果的に全校導入は見送られ、採用は学校の判断に委ねられた。エストニアでは全校でプログラミング授業が必修というわけではないが、その多くが選択科目として入っていく。
プログラミング教育を通じては、批判的思考や問題解決能力、創造力や協調性を育成する狙いがある。冒頭のロボット開発授業も、この選択型プログラミング教育の発展した姿であったのだ。
とはいえ、一般教員にとって、ITを使ったり教えたりするのは、日本と同様に苦手意識が強かった。
そこで、現在は「教育のための情報技術財団(HITSA)」という団体が中心となって人材教育を行っている。大学や通信会社、ITの専門家など民間が加わっている団体から、派遣されて先端的な技術を学べる体制がある。第21学校にも、そのような外部の人が教えにくるのだという。
ITの環境が整ったことで、IT教育自体が進むだけでなく、問題解決能力や論理的思考力、そして科学的な思考力も備わっていったと考えてよいだろう。