おとなしくても急増する
前立腺がんを侮ってはいけない

 進行が遅い、おとなしいタイプのがんといっても、前立腺がんで命を落とす例はゼロではありません。排尿困難、頻尿や血尿、そして骨盤や背骨の痛みなどの自覚症状を伴ってから発見された前立腺がんは、ステージ4すなわち遠隔転移を来している進行がんであることが多く、その大半は根治できず死に至ります。

 前立腺がんの中には、別の原因で亡くなってから初めてその存在がわかるような進行の遅い場合もあり、それがたまたま生前に見つかったとしても命に別条はありません。しかし、中には命に関わる前立腺がんもあるので決して油断はできないのです。

 既に触れましたが、前立腺がんの罹患者数は急増しています。患者さんの多くは70歳以上と比較的高齢者の方ですが、前立腺がんが増え始める40歳以降は注意が必要です。前立腺がんが急増している理由は高齢化に加えて、食生活の欧米化が大きく関わっているといわれています。

 また、検査感度の高いPSA検査の普及により、前立腺がんの発見率が増えたため、以前は発見されなかったものも同定されるようになり、その結果として発症数が増加したように見える点も指摘されます。

前立腺がんの予防と検診のポイント
日本的な食事と定期検査を

 どのがんにも共通して言えることですが、がん発症を予防する生活を心がけることが何よりも大切です。前立腺がんは動物性の高脂肪・高コレステロールの食事をとり続けることで、発症しやすくなると考えられています。逆に、野菜や魚、穀類を中心とした昔ながらの日本の食事は、予防効果があるといわれています。特に、豆腐やみそ、しょうゆなどの大豆に含まれるイソフラボンは、さまざまながんに対する予防効果が期待されています。

 ほかに、ビタミンAや抗酸化作用の高いリコピンを含む緑黄色野菜をしっかり摂取することが大切です。また、適度な運動により肥満を回避することもがんの発症予防に有益と考えられています。

 また、40歳を過ぎたら定期的に血液検査で高感度PSA検査を受けることをおすすめします。PSA値のカットオフ値(定量的検査で陽性、陰性を分ける値)は年代ごとに異なり、40代は2.5ng/ml、50代3.5ng/ml、60代4.5ng/ml、70代以上で6.5ng/mlとされています。検診でPSA値が1.0ng/mlの場合は3年ごと、1.1~カットオフ値では毎年の検査が推奨されます。そして、超早期でがんが発見された場合は、監視療法やフォーカルセラピーも念頭において、自身が納得できる治療法を選択すべきでしょう。

(北青山Dクリニック院長 阿保義久)