この改定率と基本方針に沿って、具体的な医療費の価格を決めていくのが「中央社会保険医療協議会(中医協)」だ。

 中医協は、1950年(昭和25年)に設置された厚生労働大臣の諮問機関で、支払い側(健康保険の保険者、加入者、事業主の代表)、診療側(医師、歯科医師、薬剤師の代表)、公益側(学術経験者など)の三者構成で審議されており、必要に応じて専門委員が参加する。

 医療費を支払う人、医療を提供する人、そして第三者の立場の人が意見を交わし、それぞれの利害を考慮しながら、最終的に意見調整をしていくという民主的な手続きのもとで診療報酬は決められている。

 妊婦加算の導入を決めたのも中医協で、日本産婦人科医会、日本産科婦人科会からの要望を受け、妊婦が安心して医療を受けられる体制を構築するために、2018年4月に新設されることになった。

妊婦加算の本来の目的は
妊婦の安全を守るため

 妊娠している女性を診療する場合、医療機関には母体や胎児に配慮して診療を行うことが求められ、通常の診療以上の労力がかかる。

 たとえば、「この薬には胎児に奇形が起こる危険性はないか、胎児の発育や機能に悪影響を与える毒性はないか」など、医薬品が母体や胎児に与える最新情報を医師はアップデートする必要がある。また、妊娠中は尿路感染症の頻度が高くなるなど、妊婦に多い合併症の可能性も考えなければならない。難しいのが妊婦の急性虫垂炎の診断で、場合によっては早産や流産などの危険もあるため、医療機関には母体と胎児に配慮した慎重な対応が求められている。

 多くの医療機関は、こうした配慮を無報酬で行ってきたが、その一方で通常よりも労力を要する妊婦の診療に消極的な医療機関もある。

 そこで、これまで無償のサービスだった妊婦に対する診療の労力を、診療報酬という形できちんと評価するために妊婦加算は新設された。そして、妊婦の診療に積極的な医療機関を増やすことで、妊娠していてもどこでも安心して医療を受けられる体制の構築を目指すことにしたのだ。

「加算がつけば、妊婦の診療に積極的な医療機関が増えるのか?」と疑問に思うかもしれないが、医療機関は経営のために、高い診療報酬がついた医療行為を積極的に取り入れる傾向が強い。そのため、日本では、診療報酬を引き上げることで、充実させたい診療科や医療行為に医療機関を誘導するといったことが、これまで繰り返し行われてきた。