会議を空気に拘束させず、多数決原理を健全に生かすには?

 多数決という議決方法を日本で有効にしようと考える場合、次の2つの対策が必須となるでしょう。これを義務付けないと多数決は健全に機能しないからです。

(1)議題のプラス・マイナスの2つの側面を必ず論じる時間を設ける
(2)多数決が通っても、指摘を受けたマイナス部分の対策実施を確実に行う

この2つの対策が求めているのは、議論されている命題を「相対的に扱う」姿勢です。 正しく見えることも、実際には否定的なデータを無視したことでそう見えているだけかもしれないからです。空気は都合の悪い現実を無視させる圧力でもあります。

 山本氏は、中東や西欧諸国が歴史の中で周辺の各国や異民族と衝突を繰り返した結果、次のような、空気に拘束されない思考を生み出したとしています。

 対象をも自らをも対立概念で把握することによって虚構化を防ぎ、またそれによって対象に支配されず、対象から独立して逆に対象を支配するという生き方を生んだ(*5)

 多数決で賛成可決された問題も、可決されたからマイナスの要素が現実から消えたわけではありません。単に、参加者の頭の中からマイナスの要素の検討意識が消えただけなのです(これは相対化→絶対化の逆行です)。

 これが日本における多数決原理の最大の誤用であり、日本で会議が空洞化することで生まれる悲劇の元凶なのです。

 本来、議論や多数決原理は、問題のプラス面とマイナス面を両方認識したうえでどちら側に進むかを決めることです。そのため、マイナス面を無視させる形に多数決を悪用させず、相対化の原則を順守する形で利用する枠組みが必要なのです。

(注)
*5 『「空気」の研究』P.79

(この原稿は書籍『「超」入門 空気の研究』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)