日本という国には、不思議な「何かの力」が作用している。何か事件があると、講釈師がたくさん現れ、事実をそのまま伝えず、都合のいい解釈を伝える。フェイクニュースが騒がれ、ファクトの重要性が問われる今、私たちは改めて日本に作用する「何かの力」を考えるべきだ。40年読み継がれる日本人論の決定版、山本七平氏の『「空気」の研究』をわかりやすく読み解く新刊『「超」入門 空気の研究』から、内容の一部を特別公開する。

空気とは結局、支配のための装置
「虚構」だけが人を動かす力である

 山本七平氏は、『「空気」の研究』の第2章の最後で、「空気」の最終的な狙いと役割を述べています。

 以上に共通する内容を一言でのべれば、それは何なのか。言うまでもなく、それは「虚構の世界」「虚構の中に真実を求める社会」であり、それが体制となった「虚構の支配機構」だということである(*1)。

 山本氏が指摘した空気の構造は、支配を目的とした装置なのです。しかし山本氏は、虚構について次のような指摘もしています。

 虚構の存在しない社会は存在しないし、人間を動かすものが虚構であること、否、虚構だけであることも否定できない(*2)。

 この世界では、人は未来を正確に予測することはできません。ビジネスで「やればできる」と考えることは、「AならばBである」という意味で、ある種の希望的な前提です。

 ある企業が新規事業の計画で全社的に盛り上がることは、空気(前提)で経営陣、多くの社員が動いていることになります。AならばBであるという“希望的な前提”は現実には存在せず、社員の心の中にしかないのです。

 一方で、「そんな無謀な計画は無理だ」と考えることは、ネガティブな意味で「AならばBである」という前提がその人や集団の中にあることになります。

(注)
*1 山本七平『「空気」の研究』(文春文庫)P.161
*2 『「空気」の研究』P.161