日本人は相対的に問題に対処することが苦手だ。公害が起きれば、「公害=絶対悪」で、絶滅すべき、工場は全部止めろという破壊的な結論になりがち。これでは現実的な対処はできず、どちらかを叩き潰すまで続き、問題は一向に解決できない。こうした思考は、日本人が「空気」に操作されやすい特徴と大きく関係している。15万部のベストセラー『「超」入門 失敗の本質』の著者・鈴木博毅氏が、40年読み継がれる日本人論の決定版、山本七平氏の『「空気」の研究』をわかりやすく読み解く新刊『「超」入門 空気の研究』から、内容の一部を特別公開する。

「空気による支配」の3つの基本構造

 「私たち日本人は「空気という妖怪」に、どう支配されてしまうのか。山本七平氏は、「空気支配」の3つのパターンを挙げています」

[1]「文化的感情」の臨在感的把握による支配
[2]命題を絶対化する「言語」による支配
[3]「新しい偶像」による支配

 空気支配は基本的に、「臨在感」「感情移入」「絶対化」などの心理的効果を背景にして生まれています。

 空気支配の力は、いずれも人の心から生み出されているのです。心に芽生える恐怖・救済への希望・依存したい心理などを、人間を拘束して操る物理的な力に変えているのが、空気の支配手法(技術)だと言ってもいいでしょう。

 では、空気による支配の3つの基本構造とは何か、順に見ていきましょう。

日本人が人骨に感じる特別な感情とは?
支配構造[1]「文化的感情」の臨在感的把握による支配

 一つ目は、人骨などへの感情移入・臨在感によって起こる原始的な空気支配です。

 日本人とユダヤ人が共同で、毎日のように人骨を運ぶことになった。それが約一週間ほどつづくと、ユダヤ人の方は何でもないが、従事していた日本人二名の方は少しおかしくなり、本当に病人同様の状態になってしまった(*1)。

 遺跡の発掘現場で人骨が大量に出土しました。人骨を運搬する作業を続けると日本人だけが病人のようになり、人骨投棄の作業が終わると、二人ともケロリと治ったのです。

 この二人に必要だったことは、どうやら「おはらい」だったらしい(*2)。

 日本人の二人は、人骨に特別な文化的感情を持っていました。いわゆる穢れという意識、忌避すべき対象、あるいは人骨に魂が宿っているなどの感覚です。

 その上で、「感情移入の絶対化」すなわち、自分たちの心や感情が現実であるという思考が強くなっていけば、「穢れや恐れを人骨に感じる」→「感情が現実であり、自らが穢れや呪いなどにかかる」という状態を招いてしまうのです。

 一方、人骨に日本人のような文化的感情を持たないユダヤ人は何ともありませんでした。この場合は、日本人の伝統と感情の結び付けが、空気の支配を生み出したのです。

(注)
*1 山本七平『「空気」の研究』(文春文庫) P.32
*2 『「空気」の研究』P.32