経営判断は妥当なのか?
大阪メトロは情報開示すべき

 ところが今回の計画で、3駅と完成済みの梅田に新たなコンセプトが付与され、デザインが変更されることになった。新計画の完成予定時期は、梅田が2020年度、新大阪が2021年度に延長されているが、いたずらに工期を延長すれば無駄な費用がかさむだけだから、少なくとも工事中の4駅については、利用者・地域の意見をふまえてブラッシュアップしていく時間的余裕が織り込まれているとは考えにくい。

 ちなみに、東京メトロも銀座線の全面リニューアルを進めているが、この構想が初めて登場したのは2010年のこと。2012年12月からデザインコンペを実施し、2015年に着工し、2017年末に浅草から神田までの7駅が完成したが、全駅のリニューアル完成にはまだまだ時間を要する見込みだ。

 銀座線の駅リニューアル計画は、浅草から表参道まで全18駅で総額400億円だから1駅あたり22億円、大阪メトロのリニューアル計画は計15駅で総額300億円だから1駅あたり20億円で、規模感は同等ということになる。これだけの大きな計画を6年間で完成させるのは、設計や発注、工事調整だけでも相当な苦労だ。その上、さらに利用者の理解や納得感を得るためにリソースを割く余裕はあるのだろうか。

 実は、この課題を一挙に解決しうる「特効薬」が大阪メトロの中期経営計画には記されている。それが、車両・駅・地下街のリニューアルを統括するCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)の存在である。上品なやり方とは言えないが、利用者の多数から支持を集めるCDOを任命することで、個々のデザインに批判があっても総論賛成とみなす方法はあり得るだろう。

 ところが、今回の発表からはCDOの存在感が全く伝わってこない。そもそも統一的な意志も感じられない。それもそのはず、今回改めて大阪メトロに取材したところ、現在も大阪メトロのCDOは空席のままというからだ。大阪メトロは今回の発表を、中期経営計画の実現に向けた第一弾としているが、自ら掲げた方針から逸脱した形で計画を進めていることになる。

 そもそも公募型プロポーザルを経てデザインコンセプトを策定した梅田駅を、「日本の美、ほのぼの」から「インフォメーション・ターミナル」という全く異なるコンセプトに変更の上、リニューアルから3年しか経過していないホームを再改修するという経営判断は妥当なものなのだろうか。

 大阪メトロは中期経営計画で「上場企業と同水準の監査・内部統制の機能を確立」するとうたっているものの、いまだに中間決算の発表はされておらず、民営化以降公式webサイトから市営地下鉄時代の事業計画やプレスリリースは消えてしまった。市営事業でもなく上場企業でもない、宙ぶらりんの「民営化」によって説明責任が覆い隠されてしまっては本末転倒である。

 こうした疑念を払拭するために、大阪メトロには、民営企業としてふさわしい積極的な情報公開を期待したい。