自発性がモチベーションを高め、
活力を生む

「自分を操縦するコントローラーは自分で握りたい。人から動かされることには抵抗がある」

 そう思う人が少なくないのではないだろうか。

 ここで1つ、自分自身の子どもの頃を思い出してみよう。

 テレビを見ながら、「そろそろ宿題をやらないとまずいな」と思っていたところ、母親から「いつまでテレビを見てるの!宿題はやったの?」と言われると、「今やろうと思ったのに、もうやる気なくなった」と反発し、テレビを見続ける。そんな経験をした人は少なくないだろう。

 遊んだり、趣味に浸ったりしている時に楽しいのは、人から強制されてやらされているのではなく、自発的にやっているからだ。自分の好きなようにできる時、充実感があり、やる気も湧いてくる。

 逆に、「やらされ感」は意欲を削いでしまう。だから職場で「言われた通りにやればいい」といった状況下に置かれていると、やっている仕事は自発的なものでないため、他人事になってしまう。これではやる気を出して仕事に取り組むことはできない。

 産業心理学の萌芽が見られた100年ほど前、出来高制を用いるなど「アメとムチ」でモチベーションを上げさせようという科学的管理法が推奨された。だが、そのうち人間には「アメやムチ」と関係なく、成長や自律性を求めて自ら努力する側面があるといった認識が広まり、「従業員の人間的な側面を無視してはならない」と言われるようになった。つまり外から管理するやり方では、成長欲求や自律欲求は満たされない。

 ところが、このところITの発達で、規則的な管理が強まるようになると、個人の労働はきめ細かく管理されるようになった。個人による仕事のムラをなくすため、アルバイトでも熟練者と変わらぬ仕事ができるように、きめ細かなマニュアル化も進んでいる。決められた通りにやれば一定の労働水準が保たれる。使う側にとっては便利で安心だし、働く側も楽かもしれないが、慣れてくるにつれ、惰性になってくる。これほどやりがいのない働き方はない。

 冒頭に出てきたAさんの会社の「決められた通りにやればいい」という従業員の声からもわかるように、活力が感じられないのは明白だろう。