白鵬の「無敵感」にも陰り
上位陣に忍び寄る衰えの気配

 昇進場所の17年3月場所は、その重圧にも耐え優勝したが、ご存じの通り、左上腕部を負傷する不運に見舞われた。その後は故障の影響か出場しても思うような成績が残せず、途中休場が続くことになる。そして引退時に明かされた故障は左上腕の筋断裂。手術もできないほどの大ケガで、完治は無理ということだった。稀勢の里の持ち味は左からの攻めだ。とくに左からのおっつけは強烈で、ここから有利な体勢になる相撲を得意としていた。組んでは左四つ、左からの突き落としも武器だった。その左が故障で使えなくなったわけだ。不振が続くのも無理はない。

 引退を考えてもおかしくない状況だが、それでも休場し治療しながら12場所在位した。それも日本出身横綱に対するファンの期待を痛いほど感じていて、なんとか復活したいという思いがあったからだろう。負傷してから2年近く、この状態にあったのだから、精神的にも相当きつかったにちがいない。横綱だからこそ味わわなければならなかったつらさだ。

 10年以上、ファンを沸かせてきた稀勢の里の引退が象徴するように大相撲に潮目が変わる時期が来ている感がある。他の上位陣も揃って陰りが見え始めたからだ。

 白鵬は9日目まで全勝を守り、今場所も優勝争いをリードしているが、かつてのような圧倒的な強さは見せていない。前半戦でも相手に押し込まれ、持ち前の相撲センスと体の柔らかさで白星を拾った相撲が何番もあった。

 もうひとりの横綱、鶴竜も故障している右足首の具合がよくないらしく、全休した昨年11月場所に続いて休場した。大関陣も栃ノ心が右太ももの故障で途中休場、豪栄道も相撲に精彩がなく黒星が先行する状態だ。

 白鵬と鶴竜は33歳、豪栄道は32歳、栃ノ心は31歳。全盛期のような動きができなくなったり、故障しても治りが遅い年齢になっているわけだ。