なぜ金銭報酬で釣るのは
危険なのか?

現状と理想の両方からしっかりアプローチとはいっても、最悪の現状を認識させ危機感を醸成するのは必須ですが、それだけだと本当に逃げてやる気をなくしてしまいます。重要なのは理想を描くことです。

そもそも理想の状態が全く描けないので、やる気が生まれません。
ただし、理想の状態は架空の話でも夢物語でもダメです。
さらに金銭報酬の約束は、やってはいけません。金銭報酬は恐ろしいもので、例え給料が変わらなくても、「上がるかも!」と期待をした時点で、自分の中の基準は上がった給料になっています。
そこで、上がらない事実が分かると、給料が変わらないのに、心理的には「給料が下がった」と思ってしまうのです。
そうなると、給料が変わらないのにやる気を失い、現状の給料に文句が出ます。

理想は金銭的報酬ではなく、仕事へのやりがいや、周囲からの期待、権限、責任感といったもので高めるのです。
そうすることで、仕事をする意味が生まれ、自分が必要とされているという自己肯定感も高まり、それが仕事へのやる気にも繋がってきます。
そういう理想の状態を描いてあげるのです。

勿論、結果としてそれが昇給に繋がれば、やる気は更に増すでしょう。しかし、昇給をちらつかせてやる気を上げるのだけは危険だと思ってください。

人は、誰かの役に立っていたい、誰かから必要とされていると生きがいを感じます。
誰からも期待されない、誰からも必要とされなければやる気は生まれません。
部下のやる気を引き出すための「問題」の認識は、マネジメントの中でも非常に重要なポイントです。
部下の目が輝きだすのも、あなたが「問題」をしっかりと認識させられるかに掛かっています。

部下を変える!<br />危機的状況と成功をイメージさせる『ギャップ法』<br />羽田 徹(はだ とおる)
話し方コンサルタント・トップ講師プロデューサー・株式会社web-school.tv代表取締役
大学生の頃よりラジオDJを始め、1998年に大阪人気No.1のFM802主催の新人DJオーディションに合格。その後FM愛知や文化放送でラジオオDJとして10年間活動。番組降板により挫折し不動産投資会社の営業に転職。話し方を武器にさらに営業力を磨き、2年目にトップ営業になる。2008年にはその営業力が認められ倒産寸前だったロープライス眼鏡会社の取締役営業本部長に就任し、当時64店舗から110店舗への躍進を支える。またインターネットカフェ最大手にて社外取締役を歴任。2012年、ラジオDJとしての話し方の技術、営業力、組織マネジメント力、経営経験などを生かし、組織人事コンサルタント会社のリンクアンドモチベーションにてナビゲーター(研修講師)、ファシリテーターとして活動。大手企業からベンチャーまで年間100件以上登壇、延べ2万人以上の人たちと接する。研修講師の採用や育成の責任者も兼任。新人やマネジメント研修、エグゼクティブへのスピーチ・プレゼン指導、組織活性ワークショップ、働き方改革の為のロジカルシンキング講座などを得意とする。自身の経験から「学びでこの世界を豊かにする」を理念として活動中。著書に『ビジネスマンのためのスピーチ上手になれる本』(同文舘出版)がある。社会人のための「話し方動画教室オンライン」運営。