その理由が解明されないと、今後についてもそう考えていいのか否かは断言できないが、今後も輸出入数量はそれほど為替レートの影響を受けない可能性は高そうだ。円安になって5年以上経過しても、輸出入数量がさほど変化していないことを考えると、何らかの構造変化が生じている可能性が高いからだ。

 そうだとすれば、円高になっても輸出入数量指数にはさして影響しないかもしれない。そうなると、円高が消費財価格を押し下げて個人消費にプラスに作用することなどと考え合わせたとき、本当に円高が景気にマイナスであるのか否か疑わしいともいえよう。

 このように、「米国の景気が悪化すると円高で日本の景気が打撃を受ける」という経路がそれほど懸念されないことに加え、もう1つの「海外の景気が悪化すると日本の輸出数量が減り、国内生産が減り、国内の雇用が減り、失業が増える」という経路についても、以下のように考えると、これまでほどは懸念されないのかもしれない。

米国景気が悪化しても
日本の失業は増えない

 筆者が注目しているのは、昨今の労働力不足である。仮に米国の不況で輸出数量が減り、製造業の生産が減り、製造業の雇用が減ったとしても、比較的容易に失業者は他の仕事を見つけられるから、失業問題が深刻化する可能性は高くない。

 製造業の生産が減ると、期間工が「雇い止め」にあうなど、製造業労働者が失業するほか、部品や製品を運搬する運送業や、工場内を清掃する清掃業などの雇用も減る。通常であれば、彼らは全員が失業者として路頭に迷いかねないが、昨今はそうした業種が労働力不足なので、「製造業からの受注が減ったので、労働力不足が少し緩和してホッとした」といったことになりそうだ。

 工場の期間工などは路頭に迷う可能性があるが、仕事を選ばなければ、すぐに次の仕事が見つかるだろう。今は期間工の奪い合いで賃金も高くなっているが、それが時給の安い仕事になってしまうとしても失業するわけではないから、事態の深刻さは不況期とは全く異なるはずだ。