では、あなたがニューパワーを使って、自分の影響力を増し、やりたいことを実現していくには具体的に何をすればいいだろうか? とくに重要な3つのポイントにしぼって、紹介したい。

【ニューパワー・スキル1】
情報を「拡散」する

 やりたいことをできるだけ成功裏に実現させるには、うまく「人を巻き込むこと」が重要だ。自分ひとりでできることはたかが知れている。これは古今変わらない。しかし、人を巻き込むといっても、一昔前なら、とっかかりがなかなかなかった。

 だが、いまやインターネットがある。ネットを使って情報を拡散することが、ニューパワーをうまく活用する第一歩となる。

 もちろん、ツイッターでただただリツイートを乱発するなど、ネットの海にやみくもに情報をアップしても、誰の目にもとまらない。では、いかなる戦略が必要なのか。

 本書では、その方法の1つとして「ACE原則」という戦略を紹介している。

 著者たちによると、「いま、もっとも成功しているアイデアやコミュニケーション戦略の多くには、このACE原則が取り込まれている」という。これは、「ニューパワーの世界でアイデアを拡散するために重要な3つの原則」だ。

・Actionable(「行動」をうながす)――そのアイデアは行動をうながす。ただ憧れたり、記憶したり、消費したりする以上の行動を起こすきっかけを人に与える。その「行動」はシェアにはじまり、さらにさまざまな形に発展していくことも多い。

・Connected(「つながり」を生む)――そのアイデアは、大切な人たちや価値観を共有する人たちの仲間同士のつながりを促進する。アイデアの共有によって、周りの人を身近に感じ、自分は志を同じくする仲間の一員だと感じることができる。そこから、アイデアをさらに拡散させるネットワーク効果が生まれる。

・Extensible(「拡張性」がある)――そのアイデアは、各参加者によって容易にカスタマイズやリミックスやシェアができる。共通のベースから、各コミュニティがアイデアをアレンジし、発展させられる構造になっている。(『NEW POWER』より)

 それぞれ簡単に説明すると、「Actionable」というのは、アイデアを拡散したければ、行動できる要素を取り入れたほうがいい、ということだ。たとえば、いちばん簡単な行動は「シェア」だ。ついシェアしたくなってしまう情報を流すことが大事だ(同書からの記事「バズフィードが大成功した『シェアを増やす』たった1つのコツ」参照)。あるいは、「アイス・バケツ・チャレンジ」のように、シェアを超えて、自分でも参加して行動できるような要素があると、さらに広げやすくなる。

「Connected」は、「つながれる」要素のあるアイデアがいい、ということだ。「アイス・バケツ・チャレンジ」の例でいうと、ただ一回パフォーマンスを見せて終わりではなく、次に「チャレンジ」をする友だちを指名する仕組みになっていた。人々につながりあう大義名分を与えたのだ。また、ASL(筋萎縮性側索硬化症)の患者を支援するという公共的な目的があったので、仲間同士で、自分たちの価値観を示し合う(精神的につながる)ことができた。

「Extensible」というのは、アイデアをいじれる、つまり隙がある、ということだ。「アイス・バケツ・チャレンジ」でいうと、さまざまな人が自由にアレンジをすることができた(氷水をかぶるかわりに、氷をつまんでウイスキーに入れて飲むというやり方に変える者まで現れた)。本書の著者の1人、ヘンリー・ティムズは「#GivingTuesday」という慈善企画で、約100か国を巻き込み、1億ドル以上の資金収集に成功したが、このチャリティも「#GivingBlueday」「#GivingZooday」などと、誰もが自由にアレンジできる仕組みになっていた(詳細は本書を参照)。