【ニューパワー・スキル2】
「熱狂」を引き出す
情報を拡散するだけでなく、多くの人に熱心に「参加」してもらえれば、「パワー」をさらに大きくできる。熱狂的な味方になってもらい、積極的に広げてもらったり、企画に直接協力してもらったりするのだ。
たとえば、オンラインサロンなどのファンたちが、ものすごく熱心に主宰者に貢献しているのを目にして、「どういうことだろう?」と思ったことはないだろうか。本書ではそうしたコミュニティの実例が数々取り上げられているが、そこにはじつは熱狂を引き出す「仕組み」がある。
著者たちはそうした熱狂的なフォロワーのことを「スーパー参加者」と呼んでいる。いま、世界ではさまざまな企業がこうしたファンをつくることに腐心している。
たとえば、近年、爆発的に成長している中国のシャオミがそうだ。2010年にできた会社だが、いまや世界第3位のスマホメーカーだ。シャオミは盛んなイベントでファンの囲い込みをしているばかりでなく、開発にまでファンを参加させる仕組みをつくっている。
「リン・ビン(共同創業者)は、シャオミのユーザーフォーラムには4000万人のメンバーがいると語っている。もう一人の共同創業者、リ・ワンシャンによれば、スマートフォン・フォーラムでは、毎日200万回ものインタラクション(コメント等のユーザーのアクション)がある。
シャオミでは毎週金曜日を『オレンジ・フライデー』と呼び、アップデート版のユーザーインターフェースを提供し、コミュニティにフィードバックを求めている。リ・ワンシャンが言っているように、『10万人の研究開発チームを抱えている』ようなものだ」(『NEW POWER』より)
本書では、スーパー参加者をつくるためのさまざまな仕組みを紹介しているが、とくに「参加特典」というものをつくりだすのが重要と説いている。参加特典は、以下の公式によって成り立っている。
(具体的な見返り+重要な目的)×参加=参加特典
著者たちは一例として「スター・シチズン」というゲームの例を挙げている。2012年に開発を宣言してクラウドファンディングで開発資金を募り、約2億ドルという史上最高額の募金を集めたゲームだ。
「スター・シチズンは、先行投資への『具体的な見返り』として、ゲームの完成品および宇宙船の仕様に関する希望をかなえることを約束し、それに加えて、PCシム復活のミッションに参加するという『重要な目的』を提供した。さらに、その両方が『参加』によって増強された。同じ夢を見る仲間たちの活気あるコミュニティの市民権と、ゲームそのものに影響を及ぼせる機会を提供したのだ。
あなたがなにを『売る』にしても、この3つのリターンを提供すれば大きな強みになる」(『NEW POWER』より)
「PCシム」というのは、パソコンを使ったゲームのことだが、制作者は、スマホゲーム全盛のいまの時代にこそ、本格的なPCシムの底力を見せつけてやろうということを呼びかけて、公共的な目的意識に訴えた。
それだけでなく、ゲーム内の装備(具体的な見返り)を与えたり、貢献しやすい仕組みをつくることで、人々の参加の意欲を引き出し、熱狂的なファンをつくることに成功した。