世界トップクラスの
アグリテック企業目指す

 そもそも全農は従来のイメージを覆すくらい、すごく頑張ってやってくれています。担い手農家の対応をしてきた部署や神奈川県平塚市の研究所出身の方など「全農の古い体質が薄い人たち」をコアにして変わろうとしているように見えます。

 全農(の都府県段階の組織である)県本部もそれぞれ温度差はあるにせよ積極的です。東北のコメどころとは、ほぼ全てドローンの活用について話をしています。

――農業業界でもデジタル格差が拡大しそうです。デジタルの波に乗り遅れたらレガシー企業でも負け組になるといった危機感は高まっていますか。

 その危機感以上に、実際にドローンが役に立つと分かってきたことが大きい。補助金を得るためではなくて、本当に農家の所得を高められるところまでドローン技術が進歩しました。

 例えば収量予測の精度が年々上がっていくのを見ると、動き出さざるを得ないのです。ナイルワークスは農家の収益改善効果のうち1割を売り上げとしてもらえればいいというのがポリシーです。

――地域農協や全農は肥料、農薬を大量に売って手数料で稼ぐ売上至上主義のビジネスをしてきました。収益改善効果を農家と企業が分け合う「レベニューシェア」にJAグループが転換すれば農業は変わりますね。

 とにかく農家に儲けてもらえなければ当社のような農業事業者は成り立ちません。やるべきことはシンプルです。顧客に喜んでもらったら、こちらも喜ぶというレベニューシェアのほうが楽しいでしょ。JAグループでもそういう意識の人は増えてきています。政府の全農改革はピント外れの面もありましたが、危機感を植え付けたという点ではよかったのかもしれません。

――1万台超のドローンを飛行させて、実績を積んでいる中国の農業ドローンメーカーにどう対抗しますか。

 ドローンによる生育診断で差別化できます。例えば、上空30メートルといった高い位置からモニタリングしていては、人間の目で見える程度の情報しか得られません。

 当社は上空30~50センチほどの低空から、葉や茎の生育状況や病害虫をモニタリングする技術を持っています。稲をバケツに植え、わざと菌を発生させて、その検出や防除のやり方を研究しています。

――今後の事業ビジョンや“野望”について教えてください。

 まず今年、コメの技術を確立します。コメでは負ける気がしません。次に、今年は小麦と大豆をターゲットにします。小麦は、おいしいパンやパスタなどを作るのに重要なタンパク質の含有量をコントロールする研究をしています。これができれば国産小麦を使ったパンやうどんが増えるでしょう。

 こうした技術で世界に打ってでる。かつてオランダの施設栽培が世界に広がったように、当社の技術を普及し、世界トップクラスのアグリテック企業を目指します。