近年、客船の巨大化が著しい。2018年4月には、東京タワーを横に倒したよりもまだ長い全長362.12m、高さ66m、総重量23万トンの超大型客船「シンフォニー・オブ・ザ・シーズ」が就航した。客船の巨大化に伴い、船を受け入れる港も近年変化しつつあるのだという。今、港には何が起きているのか?横浜市港湾局の藤岡信剛氏に話を聞いた。(清談社 島野美穂)
全長300m超えの超大型客船が
近年立て続けにデビュー
「横浜港のメインターミナルとなる大さん橋ふ頭の長さは、450mあります。そのため長さの面だけで見れば、たとえば全長300m超えの客船であっても、港に着けること自体は可能です」(藤岡氏、以下同)
ただし、大きな船は、その分高さもある。大さん橋ふ頭に着く以前に、横浜ベイブリッジの下を通過することができないという問題が立ちはだかる。
「海上から橋まで約56mですので、それ以上の高さの船は、ベイブリッジの下を通過できません。過去には、高さ56.6mのキュナード社の大型客船『クイーン・エリザベス』が大さん橋に寄港したこともありますが、干潮時、海面が低くなる時間帯を狙っての寄港でした。昨年横浜港に寄港した『クァンタム・オブ・ザ・シーズ』のような客船は、たとえ干潮時でも、大さん橋ふ頭まで入ることはできないでしょう」
現存する船で、ベイブリッジを通過できないであろう超大型客船は、ほかにも多数ある。「シンフォニー・オブ・ザ・シーズ」の姉妹船で、全長362.12mを誇る「ハーモニー・オブ・ザ・シーズ」をはじめ、「オアシス・オブ・ザ・シーズ」、「MSCメラビリア」などだ。いずれも全長300m超え、総重量は20万トン近い。
しかし、横浜港ではこうした超大型客船を受け入れる対応策がすでにある。横浜ベイブリッジをくぐれない船を迎え入れる際は、大さん橋ふ頭ではなく、大黒ふ頭を利用しているのだ。横浜ベイブリッジよりも手前(東京湾側)にあるため、橋をくぐる必要がない。大黒ふ頭は、主に自動車専用船のために利用されてきたが、現在では、超大型客船の受け入れにも利用されることが決まっている。
横浜港の過去のデータを見ると、2017年、横浜港に全長300m超えの船が寄港したのは1回のみ。ところが2018年は11回に。2019年は「さらにその倍は寄港することが予想されている」というのだ。
「すでに寄港が決定している超大型客船はいくつもあり、さっそく4月、5月には、『クイーン・エリザベス』が大黒ふ頭で発着クルーズを行う予定です」