重労働であるにもかかわらず、賃金が低いことなどが問題視されている介護職だが、その中でも特に過酷さが際立つのが国家資格の「介護福祉士」だ。病院やクリニックでは、介護福祉士はヒエラルキーの最底辺に位置しているという。介護施設・病院で15年勤務し、現在は介護保険外サービスを展開する「ライフケアサポート」の代表・中村英樹氏が、業界の闇を暴露する。(清談社 角南丈)

国家資格なのに…
手取り15万円で離職者続出

介護福祉士の労働実態は過酷です。介護職員を指導する立場である介護福祉士は、国家資格でありながら、現場でのヒエラルキーは最底辺。しかも薄給とあって、離職者が続出している Photo:PIXTA

 平成最後の12月、賛否両論渦巻く中、政府は「出入国管理法改正案」を成立させた。これによって外国人労働者の受け入れが拡大し、少子高齢化で人材不足に悩む産業の働き手を確保することが期待されている。

 特に人手不足が深刻な産業のひとつが介護だ。みずほコーポレート銀行産業調査部の推計によれば、2015年に9.8兆円だった介護業界の市場規模は、2025年には15.2兆円にまで達する見通しだが、業界の離職率は16.2%となっており、約6人に1人が職場を離れている(平成29年度「介護労働実態調査」)。

 介護現場に人材が定着しない最大の理由は、業界全体が低賃金・重労働の“ブラック化”していることだろう。その最たる例が、業界唯一の国家資格である介護福祉士だ。

 介護福祉士は、平たくいえば、現場で実作業する介護職員を指導する立場。働き場所は老人ホームや障害者施設、病院など多岐にわたる。日本介護福祉士養成施設協会の発表によれば、介護福祉士として登録されている人の総数は、全国で150万人3574人(2017年3月時点)に上る。

「一概にはいえませんが、介護福祉士の平均基本月給は、手取りで15万円程度。そこに資格手当1万5000円、夜勤手当がついて17~18万円といったところでしょうか。ボーナスは施設によって異なり、出るところでもせいぜい年2回(各月給1ヵ月分)となっています。もちろん早出や残業がある場合もあります」(中村氏、以下同)

 こうした状況を改善するべく、厚生労働省は推計約20万人いる勤続年数10年以上の介護福祉士について、月額8万円の賃上げを目指している。

 しかし、介護福祉士が過酷といわれるゆえんは、賃金だけの問題ではないようだ。