成績ではなく子どもの
個性を伸ばす教育へ

 中国の児童出版界を牽引する児童文学作家、曹文軒氏が2019年1月18日から22日にかけて、国立国会図書館国際子ども図書館の招へいで来日。1月20日に講演会「中国の児童文学者 曹文軒―私の人生、私の文学」が同館で催された。

 この時、中国の児童書の歴史解説を行った大阪教育大学の成實朋子教授は、中国の書籍市場約1兆4000億円のうち25%にあたる約3500億円が児童書というデータ(文化通信2018.2.13ネットニュース)から、教育投資としての児童書市場への期待の大きさを示した。

 曹氏は講演で自身の作品についての他、印象に残っている日本の児童書のひとつに『窓ぎわのトットちゃん』を挙げた。その理由に「この本の真の主人公はトットちゃんではなく『教育』、この本には子どもの教育の本質が描かれているのです」と語った。

 この『窓ぎわのトットちゃん』は黒柳徹子の個性あふれる子ども時代を、彼女の個性を伸ばす教育で対応した学校と先生との関係を中心に描かれた作品。中国では2003年に発売され、現在1000万部のヒット作になっている。

来日時にIBBYの日本支部(JBBY)を訪問した張氏(左)と曹氏(右)

 曹氏と同日程で来日していた国際児童図書評議会(IBBY)会長の張明舟氏は「『窓ぎわのトットちゃん』のヒットには、中国の子どもの教育に対する変化が読み取れる」と、講演後に曹氏と一緒にインタビューに答えてくれた。

 張氏は、児童書の国際見本市の老舗である「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」とマッチングさせたCCBFの開催で中国の児童書文化を国際的なステージへ押し上げた立役者でもあり、また2018年から中国で初めてのIBBY会長に就任した人物である。

 IBBYは小さなノーベル賞と呼ばれる子どもの本の国際賞「国際アンデルセン賞」を主催するスイスが本部の団体で、近年日本からは上橋菜穂子氏(2014年)と角野栄子氏(2018年)が作家賞を受賞し話題になった。

 そんなグローバルな児童書の世界を知る張氏は、中国の教育に対する考え方の変化が児童書市場の拡大につながっているという。「子どもの教育で学力に重点が置かれる傾向は否めないが、試験の点数アップだけでなく、もっと多方面で子どもの能力を引き出す能力開発に注力する親が増えている。児童書が表現力や多文化理解を深め、子どもの情操教育にも役立つことへの理解が中国の保護者の間で広がっており、個性豊かな海外の作品や作家への興味が強くなっている。そのため、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアと連携したCCBFの存在感が中国で増していった」とCCBFの成功の舞台裏を語る。