活力のあふれる
職場づくりになっているか?

 それをビジネスのヒントにしたのがピグマリオン・マネジメントである。
 
 社長や上司から「期待されている」と言われると、社員は誰でもついつい頑張ってしまうものである。

 実際、いくつかの職場を舞台に行われた実験的な試みや追跡調査を行ったところ、期待された社員ほど高い業績を達成し、昇進していることが示されたのである。

「ピグマリオン・マネジメント」というと、何だかわざとらしい感じがするが、部下の気持ちを束ねて活力のあふれる職場づくりに成功した上司は、部下たちに本気で期待しているものである。

ビジネス心理学 100本ノック
本連載の著者・榎本博明さんの
『ビジネス心理学 100本ノック』
が好評発売中!
日本経済新聞出版社、860円(税別)
職場や取引先等の人間関係に
悩まされている方は必読です!

どうしたら気難しい上司を納得させられるか、あの人はなぜいつも攻撃的なのか……等々に悩んでいませんか?そんな人たちの心理構造を説き明かすとともに、仕事で生かせる心理学の基礎が身につきます!

 ここで冒頭に出てきたテレビドラマの「下町ロケット」や「陸王」の舞台になった職場の雰囲気を思い出してほしい。社長は、言葉づかいはざっくばらんで、時に感情的になったり、荒っぽくなったりしたこともあるが、社員が全力で頑張ってくれることを信じている。当然ついてきてくれるものと信じ、社員の力に期待している。その期待に応えようと、みんな必死に頑張る。そんな構図が見られる。

 冒頭で掲げた、部下のヤル気を削ぐA課長の事例は、ピグマリオン・マネジメントのまさに逆を行くものだった。だから部下たちはヤル気をなくし、活力の乏しい沈滞ムードの職場になってしまったわけだ。

 パワハラや過重労働とみなされることを恐れ、横暴と思われないように表面上の言葉づかいばかりを気にしすぎるあまり、気持ちの交流が失われがちな時代である。

 上司としては、誰だって部下の働きに期待したい気持ちが強いはずだ。上司はその気持ちをもっと素直にぶつけてもよいのではないか。言葉づかいなどの「表面上のハウツー」ばかりが重視されがちだが、いくら模範的な言い方をマネたところで、そんな猿マネでは「気」の力が失われてしまう。迫力もないし、気持ちの交流も生まれない。

 人は誰も個性を持っている。自分なりの言い方でよいので、部下に対して期待することこそが大切ではないかと思う。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。