親ならば、子どもには賢く育ってほしいもの。しかし賢い子とは、どんな子どもだろうか。IQや偏差値が高い子や、受験勉強が得意な子ばかりが賢い子ではない。
もし、自分の損得だけに使う「知恵」を賢さだとカン違いして、それを自慢に思う子どもがいたとしたら、近い将来、彼(彼女)は社会からのけ者にされていくだろう。それが集団心理の基礎だから……。
弱い人の味方になれる子、自分の意見を持てる子、それをきちんと表現できる子、他人を心から応援できる子、そして素直な夢を描ける子……そんな前向きな心で人生にトライできる子どもに育ってほしいという願いを込め、心理学者・植木理恵さんはダイヤモンド社から『賢い子になる子育ての心理学』を上梓した。
心理学が積み上げてきた膨大なエビデンスをベースに、知っておきたい子育ての「正解」を解説していく。
おもうような結果が
出なかったときの声のかけ方
1975年生まれ。心理学者、臨床心理士。お茶の水女子大学生活科学部卒業。東京大学大学院教育心理学コース修了後、文部科学省特別研究員として心理学の実証的研究を行う。日本教育心理学会から城戸奨励賞、優秀論文賞を史上最年少で受賞。現在、都内総合病院でカウンセリングを行い、慶應義塾大学では講師を務める。また、気鋭の心理学者としてフジテレビ系「ホンマでっか!?TV」でレギュラーを務め、幅広い層から支持を集めている。
子どもが頑張ったのにおもうような結果が出なかったとき、親はなんと声をかければいいのか迷います。私はそんなときの声がけとして、「あれ? 不思議だね?」という言葉をお勧めしています。「どうして?」「なんで?」には、子どもの好奇心をもっと伸ばしたり、失敗を前向きなエネルギーに変えたりする不思議な力があります。
計算の練習をたくさんやったのに、算数のテストの点数が悪かった。そのとき、「努力が足りないのよ」といういい方は子どもにとっては残酷なものになります。なぜなら、本人としては十分に努力をしているのですから、「もっと努力しろ」といわれると、これ以上何をすればいいのかとなってしまいます。
ましてや「あなたは算数に向いてないんじゃないの」というのはもってのほかです。能力がないと決めつけるようなことをいわれると、子どもは努力する以前でお手上げになってしまいます。子どものやる気を根底から奪いかねない言葉です。そればかりか、子ども時代に「能力がない」とか「才能がない」というような表現をされると、その子どもは大人になっても消極的で悲観的な性格になってしまう危険性があるのです。
また、「問題が難しすぎたのよ」とか「先生の問題の出し方がおかしい」というのもあまりお勧めできません。失敗を問題や先生など、自分以外のせいにしてしまうと、たしかにそれは楽かもしれませんが、そこで終わりになってしまいます。計算の方法を間違って覚えていたとか、勉強の仕方に何か問題があるとか、点数が悪かった原因を自分自身に引きつけて考えなければ、子どもは成長しません。そればかりでなく、子ども時代に「人のせい」にする習慣を身に付けると、その子どもは大人になっても「時代のせいだ」「不景気のせいだ」と、後ろ向きで傍観者的な人生しか送ることができなくなってしまいます。