とりあえず「運」のせいに
してしまってもいい
とはいえ、親がいくらそう仕向けても、「どうしてなんだろう?」と考える気力もわいてこないほど、子どもが自信を喪失してやる気をなくしてしまっているときもありますよね。そんなときは、思い切って一度「運が悪かった」ということにしてあげるのも悪くない方法です。
私はうつの患者さんをカウンセリングするとき、よく運の話に触れることがあります。とくにうつの人は努力をしすぎてそうなったりするので、もっと頑張りましょうよ! とか、考え方を変えましょうか! などとは当然いいません。
むしろ、「そんな苦労を背負うめぐり合わせがあったんですね」「それはずいぶんつらい運命ですね」などと、病気になった理由を「あなたのせいでもない、誰のせいでもない」という漠然としたものに起因させます。自分を責めている力の入った状態から少し逃がしてあげるわけです。
患者さんがそこで「そうか、星回りが悪かったんだ」と少しでも思ってくれると成功です。気持ちが楽になって、心に余裕が生まれます。そうおもえるようになったかなと見計らった上で、少しずつ「これまでとはちょっと違うことをやってみましょうか?」などと話を進めていくのです。
子育てにも運の話は有効活用できます。おもうような結果を出せずにやる気を失っている子どもには、とりあえず運を持ち出して、運のせいにしてしまってもいいのです。「今回はついてなかったね!」「たまたま、組み合わせが悪かったな!」。勉強でもスポーツでも、頑張ったのにいい結果が出なかったのは「運だったんだ」と思えば、気持ちはやわらぎます。
そうやって落ち着いてから、前向きな策略を一緒に考えるよう仕向けることができれば万全だと思います。