日本選手の多くが世界の上位にランクされたのは、IAAF世界競歩リレー選手権での活躍が大きい。日本では大きく報じられることがないため注目度は低いが、2年に一度開催される世界競歩リレー選手権は世界最大規模であり各国の代表選手が目標とする大会だ。

 昨年5月に中国で行われたこの大会で日本選手は目を見張る好成績を残した。50キロでは荒井が1位、勝木が2位、丸尾が3位と表彰台を独占し団体優勝。20キロでも池田が1位、山西が4位、藤澤が7位に入り団体優勝。2種目とも日本は他国を圧倒する強さを見せたのだ。

厳密なルールにシビアな判定
勤勉で辛抱強い日本人に向く?

 競歩は厳密なルールがある競技だ。「常にどちらかの足が地面に接していること」、「前脚は接地の瞬間から地面と垂直になるまでヒザを伸ばすこと」の2つを守らなければならない。コース上には6~9人の審判員が配置され選手のフォームをチェックしている。違反気味の場合は注意のイエローパドル(卓球のラケットのような形をした黄色の表示板)が出され、明らかに違反している時はレッドカードが出る。注意のイエローパドルは何回出されても問題ないが、3人の審判からレッドカードが出ると失格だ。

 20キロ、50キロという長丁場を違反せず、より速く歩くにはしっかりとしたフォームを身につける必要があり、そのために選手は日々、気が遠くなるような距離を歩き込んでいる。勤勉で辛抱強い日本人には向いている種目なのかもしれない。

 とはいえ短期間に強くなったわけではない。ここまで来るには先人たちの強化にかける努力の積み重ねがあった。なかでも最大の功労者が今村文男氏だ。今村氏は日本の第一人者として1992年バルセロナ五輪や93年、95年の世界陸上に出場したが、好成績を残すことはできなかった。世界との壁を思い知らされた世代だ。が1997年、強豪スペインの合宿に参加したことがきっかけで飛躍。この年の世界陸上の50キロで6位入賞を果たした。2004年に引退した後は、コーチとなり自分の経験を生かして指導。その積み重ねがここへきて実を結んだわけだ。

 今村氏は現在、東京五輪の強化コーチとして代表候補選手たちの指導をしている。合宿に集まる選手は国際大会で活躍し、世界ランキングでも上位に名を連ねた実力者ばかりだ。当然、練習の質は高く、互いが刺激し合うことでさらにレベルアップするという好循環が生まれている。注目度は今ひとつだが、実は来年の東京五輪の陸上競技で一番期待できる種目なのだ。