売上連動の歩合賃料にすると百貨店と同質化する

朝倉 いま伺っていて、「WeWork」などの発想とも近いのかなと思いました。彼らは企業向けにコミュニティ要素のある過ごしやすいオフィスを提供されているわけですが、御社の場合は「商業施設版のWeWork」といいますか、お客さんとの接点を持つことができて、なおかつ単に場所だけでなくコミュニティとしての価値を提供されているということですよね。

青井 そういう点は、すごく意識しています。eコマースと戦うのではなくて、eコマースと協業できる、共存共栄できるビジネスや店づくりをしようということで、結構早い段階から取り組んでいます。

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 賃貸借型の商業施設は、当社に限らずたくさんありますけど、多くの場合は売上連動歩合賃料らしく、売上が伸びるほど固定賃料プラス歩合部分が増えていくんですね。そういう仕組みだと、最初は家賃が払えるかどうかでテナントを選んでいても、だんだん成長を意識するようになり、結局は売上がテナント選定基準になって、昔の百貨店さんと変わらなくなっていく。我々は遅れて参入したこともあり、家賃の固定部分を高めに設定していて、時には歩合はまったくなしという場合もあって、「お困りのテナントさんはみんな丸井にどうぞ」と門戸を広げることでユニークな商業施設ができているんです。

朝倉 オープンイノベーションですね。一般的に、従業員や不動産を抱えているという老舗企業の「強み」は、変化の激しい時代には往々にして「弱み」に転化することもあります。一方で、御社はこうした資産を「強み」として生かしていますし、リアル店舗の競合にもなりかねないeコマース等の事業者が実は顧客になっている

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青井 そうです。もうひとつの「シェアリング」については、中長期的に盛り上がっていく新しい消費の形と言いますか、面白いテナントやサービスがあります。先ほど申し上げた理由で、彼らはほかの商業施設には入居しづらい面もありますから、丸井に入っていただければお客様にとっても選択肢が増えますし、我々にとっても差別化だったり参入障壁になって、長期的な利益の源泉にもなります。そういうことをすべて含めて「売らないお店」と呼んでいます。