軍隊スタイルの文化・風土を変えた「対話」とは?

朝倉 現在の役員の方たちも80年代初頭に入社された方が多いようですが、経営陣をがらっと入れ替えたわけではなく、ある意味で成功体験をお持ちの方たちで自己変革を成し遂げられてきたというのも面白い点ですね。

青井 取締役はおじさんばっかりですけど(笑)、執行役員までいくと40代だとか女性も入っています。彼らと共に「企業文化」や「企業風土」の変革ができたからこそ、お話ししてきたような事業改革が遂行できました

 丸井の従来のマネジメントは、率先垂範を是として、先頭に立って引っ張っていく軍隊的なスタイルだったんです。ですが2007年ぐらいから、テクノロジーの変化も激しいし、それらを使いこなせる若い人たちを年齢や経験にこだわらず主役に立てて、マネジメントはむしろ彼らを側面支援する役回りになるべきだろう、と議論して対話しながら文化を変えてきました。実際に、最も社員が多い「売り場」で、若い人を主役に立て、店長や店次長、マネージャーが支えるフォーメーションに変えました。今、ようやく全店を変え終わるぐらいまできています。

朝倉 現場の抵抗も大きかったのではないですか。

青井 最初はベテランから「え?ホントにそんなことやるんですか?」と反論されました。でも、若い人が「それっていいですね」「それが自然ですよね」となると、「まあそうかな」というふうに徐々に変わってきましたよね。180度の転換でしたから10年ぐらいかかりましたが、この企業文化がベースにあったからこそ、お話したようなビジネスモデルの転換など含めて、きちんとワークしたと思います。文化が変わらないまま変革を進めても、おそらく「仏作って魂入れず」で終わっていたでしょう。

朝倉 みなさんご苦労されるのは、やっぱり組織の部分が大きいんですね。

青井 そうですね。僕も正直言えば、3~5年ぐらいでできるかなと思っていたんですけど、やってみたら10年ぐらいかかりました。それを他社さんに言うと、「10年ですか…」と遠い目をされるような雰囲気になっちゃうんですけど(笑)。ここは先ほども申し上げた、在任期間が長い創業家社長の強みですね。

「組織の文化を変えるには、10年かかった」という青井社長(左)

朝倉 文化を変えるうえでは、具体的にどんな取り組みをされたんですか。

青井 ものすごく地道に、小グループで対話をしていくしか道はありません。日常の忙しさから切り離した時間を確保して、深く話し合ってみる機会を増やしました。それは今もすごく重視していて、さまざまな職種や職位の社員が対話する場をつくっています。そういう場で話していると、仕事だけじゃなく人生そのものやプライベートに対する個々人のスタンスに話が及んでいきます。
 多くの日本人、特に昔からの大企業に勤めているようなタイプの人は、人生と仕事を切り分けていて、極端な人になると、自分の会社でお勧めしている商品やサービスは絶対に使わないという人もいるじゃないですか。でも、そういう状態はあまり幸せじゃない。本人も擦り切れるし、そういう人が集まっている会社も少しずつどこかでおかしくなる。やっぱり自分がいいと思うものをお客様にお勧めして喜んでもらえたら、自分もハッピーになる。そう考えられると、オーナーシップが生まれるというか、会社や仕事が自分ゴトになって、もっとこうしたいというアイデアややる気も出てきます。一人ひとりがもっと頑張りたくなるので、会社の業績もよくなって、企業価値も上がる

朝倉 いい循環に入りますね。

青井 そのほかに、「プロジェクト」と呼ぶ集まりもつくっています。個々人が興味のあるテーマについて「健康経営」や「ダイバーシティ」など、事業所や年齢、キャリアを超えて集まって、フラットな場で活動方針を決め、個々の現場に戻ってリーダーとしてそれぞれに進めていく、というものです。そうこうしていると、だんだん手を挙げる習慣が出てきたり、オーナーシップをもって取り組める人が増えてきているかなと。そういう動きと、新しい価値を創る事業や、新しい価値に向けて転換したビジネスモデルにどう生かして肉付けしていくか、といったことが、だいぶかみ合ってきたなと少し手ごたえは感じています。

朝倉 手間暇をかけて、はじめて組織は変わることができるということですね。お話を聞くほどに、それぞれさらに深堀りして伺いたい、気づきの多いお話でした。今日はありがとうございました。(了)