相次ぐ摘発で島の「浄化」は進む

 島を弱体化させた時代の要因はほかにもある。一つは摘発だ。

「売春島」の花火の先にある未来宿に掲げられた「建前」は最近張り出されたように見える
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 日本は国際社会から「人身売買大国」の汚名を着せられた。そして、「歌舞伎町浄化作戦」にみられる性風俗への規制強化が進む90年代後半から現在に至る日本において、「売春島」は浄化されるべき対象だった。

 98年5月、職業安定法(労働者の有害支配)違反。99年12月、売春防止法違反。00年2月、児童福祉法違反で置屋経営者を逮捕。00年6月、職業安定法(有害業務目的の職業紹介)違反。00年12月、タイ人女性の出入国管理法違反。

 2000年前後、ほかにもあらゆる名目で島に女性を斡旋した暴力団員とともに、島民・売春婦が逮捕され、島は警察の摘発を受けた。もちろん島は今でも「売春島」であり続けるが、制約条件が明確に増え「商売をしにくくなった」ことには違いない。

「売春島」を弱体化させたもう一つの理由

 島を弱体化させたもう一つの要因としては、情報化があげられる。

「箱型風俗(店舗型風俗店。全国的に規制が強化され新設も不可能になっている)もそうですけどね、そういうのわざわざ行かないでしょ。高いし遠いし。近くて安い、デリヘルに流れていってる」(近隣風俗産業関係者)

 インターネットで検索エンジンを開き「○○島」とその名を入れれば、それがいかなる場所なのかは誰でもたちまちわかってしまう。かつては、男たちの社会の内に隠されていた情報が、インターネットの普及とともに誰にとっても入手可能なものとなった。

「客は何でもネットで探す。女のコの質、料金、なんでも出てくる」(同)。それによって、安易に旅先として明かせない秘境となる一方で、分散的にネット上に存在する数ある性風俗の一つへと成り下がることとなり、島の潜在顧客を絞ってしまった。

 島を歩くほど実感するあばら家の多さ。その傷跡は生々しい。

 古代から続くこの島の長い歴史に比べれば、この傷跡が、まだそれほど時間が経っていない状態であることは明らかであるがゆえ、その隆盛から衰退への大きな変化を実感させられる。