能力の低さが「できるアピール」
につながっている

 最後の3つ目として指摘したいのは、謙虚さが重んじられる日本の文化的風土では、仕事のできる人が「できるアピール」をすると周囲の妬みを買い、足を引っ張られることになりやすいということだ。そのため、「能ある鷹は爪を隠す」といわれるように、本当にできる人は身を守る術として「できるアピール」を慎んでいる。

 活躍したスポーツ選手のインタビュー場面を思い起こしてもらえば、よくわかるだろう。彼らが活躍したから有頂天になって「できるアピール」をするかといえば、そんなことはない。

「まだまだ力不足なので、これからもっと頑張って力をつけていきたいと思います」
「今回はたまたま上手くいったけど、自分の課題に気づくことができたので、そこをもっと強化していきたいと思います」

 などと、活躍の中にも謙虚さを忘れず、さらなる高みを目指すコメントが多い。このように能力の高い人は、文化的風土の違いも踏まえながら、天狗にならないように自らを戒める心構えを身につけている。

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 さて本題の職場の話に戻ろう。平気で「できるアピール」する人というのは、周囲から妬まれた経験がないのだろう。妬まれる怖さを知らずに「できるアピール」してしまうところが、まさに仕事のできない人だという証拠にもなっている。

 結局のところ、「できるアピール」する人ほど仕事ができないといった多くの管理職の人たちの実感には、心理学的に見れば十分な根拠があるわけだ。

 こうしてみると、若手の積極的姿勢を見て、上司が評価したくなる気持ちもわからなくはないが、「できるアピール」する部下を真に受けて仕事を任せると、周りも巻き込んで迷惑をかけてしまいがちだということがおわかりいただけただろうか。

 部下に仕事を振り分ける際には、そのような心理メカニズムを踏まえておく必要がある。やたら「できるアピール」をする部下には要注意といっていいだろう。

 もちろん、「できるアピール」する人の中に、実際に仕事のできるタイプがいることもまた事実である。だが、一般的にいうと能力が高ければ、文化的風土を踏まえた言動をするようになるもの。従って、若手の「できるアピール」に惑わされないように、上司たちは日頃の仕事ぶりをしっかり把握しておいてほしいと思う。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。