実は、新会社の社長に就く谷口潤氏も、日立アプライアンス社長を務めた德永俊昭氏も日立をけん引しているIT部門出身で、それぞれ46歳、50歳で家電事業のトップに抜てきされたエースなのだ。德永氏は新会社発足後、日立の執行役常務として同社の成長の核であるIoT事業を統括する。

家と自動車をつなぐ戦略

 だが、德永氏がトップを務めた2年余りでは、「IoT家電」といえる商品は一部の洗濯機などにとどまった。「IoT家電は売り切りモデルではなく、月額制にするなどビジネスモデルの転換が必要だが、それには時間がかかる」(日立幹部)のが現状のようだ。

 膠着状態を打開する切り札として日立が考えるのが、家電事業と自動車部品事業のシナジー発揮だ。日立の成長5分野には「ヒューマン・ライフ」や「モビリティー」などがあるが、実は、自動車部品事業はモビリティーではなく、家電事業と同じヒューマン・ライフに属する。

 家電と自動車から得たデータを同じプラットフォームで生かし、利便性向上や健康増進を実現しようとしているのだ。東原敏昭・日立社長は「屋内と移動空間をつなぐデータ活用は日立のIoTプラットフォームが担う」と話す。

 ただ、この分野は米アップルとグーグルがすでに市場を席巻している。それぞれ「Car Play」「Android Auto」というスマホと車載ディスプレーをつなぐアプリを投入済みなのだ。米アマゾンも人工知能で家と車のデータの垣根をなくそうとしている。

 日立が家電の事業転換を図るには、相当な差別化要因が必要になりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)