とはいえ家族なら誰でも被扶養者になれるわけではない。加入者の収入で生活していることが条件で、現在はおもに被扶養者の年収がいくらかによって判断される。しかし、この年収要件は法律で定められているわけではない。

 健康保険法に記されているのは、「健康保険の加入者の収入で生活している三親等内の親族」「同居しているかどうか」といったことだけだ。

 そのため、1970年代半ばまで、収入のある妻が被扶養者になれるかどうかは、それぞれの健康保険組合が独自の判断で決めていたようだ。しかし、パートで働く主婦が増える中で、国の基準を求める声が上がるようになる。

バブル景気で引き上げられた
被扶養者の年収基準

 実は当時から、被扶養者の基準を安易に年収で区切ることは、「自由な働き方を阻害し、数字がひとり歩きする」と厚生省内では懐疑的な意見も出されていたようだ。その後、被扶養者になるために働き方を調整する主婦が増えてきたことを考えると、当時の行政官たちの見識は将来を見越したものだったと言えるだろう。

 しかし、1977年になると、「収入がある者についての被扶養者認定について」という厚生省(当時)の通達(昭和52年4月6日、保発第9号・庁保発第9号)が出され、健康保険の被扶養者になれる妻の年収は、70万円未満で、夫の年収の2分の1未満と決められる(ただし、2分の1以上でも世帯収入を総合的に判断して決められることもある)。

 70万円の根拠は所得税の控除額をもとに、本人の給与所得控除(50万円)と夫の配偶者控除(20万円)の合計から決められたようだ。その後、税制が変わるごとに、1981年4月に80万円、1984年4月に90万円と被扶養者の年収基準は引き上げられる。

 これに従えば、現在は103万円が被扶養者の基準のはずだが、1987年に所得税との連動が中止され、かわりに収入の伸びに応じた改定が行われるようになる。その結果、1987年5月に100万円、1989年5月に110万円、1992年1月に120万円と拡大していき、1993年に4月に130万円に固定される。