武田秀樹氏武田秀樹(FRONTEO〈フロンテオ〉取締役最高技術責任者〈CTO〉) Photo by Fusako Asajima

 約4000億円――。1998年以降に、米国でカルテル制裁を受けた日本企業に科された課徴金の総額である。欧米や韓国の企業と比較しても、突出して大きい金額だ。

 もちろん、自動車部品メーカーなど国際競争力の高い日本企業が米国当局のターゲットになりやすいという側面はあろう。だが、それだけではない。こうしたカルテル制裁や知財訴訟といった国際的な経済紛争に巻き込まれるリスクに対して、日本企業があまりにも無防備だという現実もある。

 そんな実態に風穴をあける技術として注目を集めているのが、FRONTEO(フロンテオ)が独自開発した人工知能(AI)エンジンの「KIBIT(キビット)」だ。2012年にデビューしたキビットは、フロンテオ最高技術責任者(CTO)の武田秀樹が中心となって開発された。

 日本企業が米国で訴訟を起こされたり、起こしたりする場合には、Eディスカバリ(電子データを対象とした証拠開示)という訴訟手続きが義務付けられている。被告と原告の双方が、事件に関する電子データ(Eメールや設計図面など)を当局に提出しなければならないのだ。

 どの種類の情報をどこまで開示することが法廷戦略上、正しいのか。Eディスカバリ対策を講じることが企業にとって焦眉の急になっている。

 ところが、多くの日本企業は法外な金額で米国の弁護士を雇っていたり、米国のディスカバリ支援企業に業務を丸投げして機密データを送っていたりする。「弁護士費用が高騰した結果、訴訟で戦う力が続かず不利な条件で和解をのむこともザラだ」。非効率な法廷対策の結果が、巨額の課徴金に表れているともいえるのだ。