本書は幅広い読者を想定しており、ひとつひとつの作品をとことん分析するという類のものではない。とはいえ本書で取り上げられているようなアニメ作品に触れ、その背景や思想に親しむことは、あなたの人生をより深く豊かにするためのヒントを与えてくれるに違いない。(大賀祐樹)

本書の要点

(1)アニメはそれ自体が教養(文化)であり、同時に教養(学問)として分析するに足るものだ。
(2)「夢」や「地獄」などの彼岸をモチーフとする10年代の代表的な作品は、日本文化を継承しつつも「再境界化」することで、現代人の価値観に揺さぶりをかけている。
(3)怖い「世界観」を背景にかわいいキャラクターが活躍するのが、10年代アニメの特徴のひとつだ。
(4)アニメ作品の中には、現実の歴史や社会情勢、遠い未来の予測が詳細に記されているものがある。そうした「世界観」には、現実の私たちの「世界像」を強く揺さぶる力がある。

要約本文

【必読ポイント!】
◆「世界観」という切り口によるアニメ論
◇「教養」としてのアニメとは

 アニメはそれ自体が教養(文化)であり、同時に教養(学問)で分析するに足るものである。というのも日本の商業アニメーションは単なる娯楽ではなく、「インフォテインメント」(Infortainment)=情報娯楽だからである。情報娯楽とは「情報」(Information)と「娯楽」(Entertainment)からなる合成語だ。この情報の部分を教養(学問)で分析、解析するのである。

 同時にアニメは「エデュテインメント」(Edutainment)=教育娯楽でもある。エデュテインメントという言葉は「教育」(Education)と「娯楽」(Entertainment)の合成語であり、一般的には「遊びながら学ぶ体験型学習」を意味する。これを転用し、アニメはある種の「教育」として機能するという論を展開することもできよう。こうした方針は、著者の前々著『教養としての10年代アニメ』(2017年)および前著『教養としての10年代アニメ 反逆編』(2018年)から基本姿勢として受け継がれている。