この連載は、「日本型雇用システム」の問題を再三取り上げてきた。初めて書いたのは、2010年4月である(前連載第47回)。当時、「終身雇用」「年功序列」に対する批判は、世の中に受け入れられなかった。自民党、民主党(当時)から共産党まですべての政治家、財界、労組、マスコミのほとんどが現職正社員の「終身雇用」を支持していたのだ。「終身雇用」という既得権が、いわば「聖域化」していた。

 企業は正社員の既得権を守る代わりに、若者の新規雇用を抑制し、派遣や請負等の非正規雇用社員を増加させた。その結果、若年層の多くが新卒で正社員として採用されず非正社員となっていた。今でこそ、多くの若者が非正規社員となった「ロスジェネ」は深刻な社会問題だ。しかし、当時は彼らを助けようという声は少なく、彼らの努力不足だという批判のほうが強かった。

 2000年代前半の小泉政権期に派遣労働が規制緩和された際に、「終身雇用」の既得権も打破し、欧米型の契約ベースの雇用システムの導入を始めておくべきだった。「日本型雇用システム」の改革は、あまりにも遅れてしまったといわざるを得ない。

「女性の社会進出」と
「日本型雇用システム」の不都合な関係

「女性の社会進出」も安倍政権が重要テーマと位置付けている課題だ。だが、これも世界から非常に遅れて始まった。保守的な思想が邪魔をして、女性を「労働力」としてしか考えられないせいで、内容も乏しい。「主婦が、アパートの隣の部屋の家事をすれば、賃金が生じる。これが女性の社会進出だ」と口走った男性政治家がいるというくらいだから、その意識の低さはお寒い限りである。

「人手不足」に悩む日本の「女性の社会進出」の問題は、基本的に仕事がないことではない。大学卒業後、会社に入りにくいということでもない。むしろ、日本独特の新卒一括採用で、どこの国よりも多くの大卒が会社に入れる(第97回)。問題は、政治家や組織の経営者・幹部を務める女性が世界的に見て極端に少ないことだ。

 どうして世界第3位の経済大国で、こんなことが起きるかといえば、これも突き詰めれば「日本型雇用システム」が、年功序列・終身雇用で組織の幹部を育成するシステムだからだ。このシステムでは、途中で結婚、出産で組織を離れる女性は幹部になれない。そもそも、途中で辞める可能性が高い女性には、重要な仕事は任せないという組織が多いのだ。だが、「女性の社会進出」と「日本型雇用システム」を結びつける議論は、いまだにあまり見られない。