この5月17日からパシフィコ横浜で開かれていた「第55回日本糖尿病学会年次学術集会」で、マグネシウムが2型糖尿病の発症を予防する可能性が示唆された。1961年から続く世界的な疫学調査「福岡県・久山町研究」をベースにした九州大学環境医学分野の研究者らの報告。

 調査では、久山町の検診データから糖尿病のない40~79歳の住民をピックアップ。その後、21年間の追跡期間中に2型糖尿病の発症が確認できた約2000人の食事内容を解析した。その結果、1日のマグネシウム摂取量が増加するに従って、2型糖尿病の発症率が低下していることが確認された。

 1日のマグネシウム摂取量が148.5ミリグラム未満のグループを基準にすると148.5~171.5ミリグラム未満/日のグループの相対発症リスクは16%減、171.5~195.5ミリグラム未満/日で33%減、195.5ミリグラム以上/日では37%も発症リスクが低下したのである。しかも、すでに糖尿病予備軍に片足を突っ込んでいる人ほど、摂取効果が高いことも判明した。

 日本人を対象としたマグネシウムと糖尿病発症に関する本格的な報告は今回が初めて。米国では2004年、ハーバード大学の研究者らが約12万8000人を対象とした調査でマグネシウムの糖尿病予防効果を示し、一気に注目された経緯がある。その後、複数の試験の横断解析からマグネシウムの1日摂取量が100ミリグラム増えるごとに、糖尿病の発症リスクは15%減少することが示唆された。

 厚生労働省の「日本人の栄養摂取基準(10年版)」によると、マグネシウムの摂取推奨量は30~49歳の男性で1日370ミリグラム、50~69歳は350ミリグラム。普通の食品から摂る分には上限はない。しかし、サプリメントを利用する際は350ミリグラム/日が上限。摂取し過ぎると一過性の下痢が生じる可能性があり、注意が必要だ。

 マグネシウムを豊富に含む食品は玄米(全粒穀物)、緑の濃い野菜、海藻類、豆類など。近年は糖尿病だけでなく脳卒中予防効果も認められている。生活習慣に自信がない人ほど、ご飯を玄米食に切り替えてみよう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド