

「貧乏人の子だくさん」とは、経済的に貧しくても子どもというかけがえのない財産があるとの意味だそうだが、世知辛い現代社会では、経済的なゆとりがないと子どもも産めないのだろうか。
上位に連なる各区の中で、異彩を放っているのが品川区だ。御殿山など一部ハイソなエリアもあるものの、区全体としてみれば住工混在の下町的イメージが強い。
そんな品川区は、地域総出で子育てを担っていこうとする考えが強く、区の施策から末端コミュニティの取り組みに至るまで、この意識が徹底している。だから子どもが増えているのなら、納得の結果である。
少子化時代を象徴する指標として、最近よく耳にする合計特殊出生率。2010年の全国平均値は1.39。東京23区は1.08。しかし合計特殊出生率は、結婚しているかいないかにかかわらず、1人の女性が生涯に産む子供の平均値を示している。
結婚しない人が多い東京では、当然数値は低くなる。東京は、少子化問題が先鋭化しているのか、あるいは少子化対策の先進地なのか。
少子化の構造は根が深く、表面的な現象だけを捉えて議論をしても、根本的な解決は得られない。未就学児に対する保育所待機児の割合(2010年)のワースト1位は港区。ベスト1位は杉並区、2位は品川区。紙幅が尽きたが、この数値が示す構造的な意味は、もう読者にはおわかりだろう。