中国GDP2%減も
金融・財政総動員で6%成長死守へ

 米国と中国が互いに輸入品全てに関税をかけた場合に、関税だけの影響で見れば、米国のGDP(国内総生産)を、0.2~0.4%前後押し下げることになるとみられる。

 トランプ大統領は、対中国の関税引き上げ分を、中国企業が輸出価格を引き下げることで負担しているかのような発言をしているが、現実には引き上げ分の大部分は製品価格へと転嫁されるだろう。また、米アップルのiPhoneに代表されるように、中国で生産され米国に輸出されている、消費財の米国企業製品は多い。関税引き上げは企業の採算を悪化させ、株価下落要因となる。

 株価下落で企業や消費者の心理が悪化すれば、設備投資や個人消費にもマイナスに作用し、さらにGDPが低下する。FRB(米連邦準備制度理事会)は、景気刺激のために利下げに追い込まれる可能性がある。

 中国から米国への輸出は約5400億ドルと米国から中国への輸出の約4.5倍だから、関税全面戦争の影響は中国の方が大きい。

 中国のGDPは、関税の影響だけで見れば、1%弱低下するだろう。ただ、米国同様、関税引き上げは採算悪化、販売減少を通じて企業収益を低下させ、株価の大幅下落を招く公算が大きい。

 金融市場が動揺すれば「2%近くGDPが減少することもあり得る」(三尾幸吉郎・ニッセイ基礎研究所上席研究員)。そうなれば、中国政府は、目標とする6%成長達成のために、金融・財政政策を総動員し、利下げや追加の景気刺激策を実施すると予測される。

 このように両国とも景気刺激の手段があるだけに、短期的には経済の安定を保つことができるだろう。とはいえ、金融・財政政策の余力を消耗することになる。

 両国の経済を痛めつけるという意味では関税戦争に勝者はいない。先端分野の技術覇権を争う両国が歩み寄る余地が小さい以上、勝者なき消耗戦の終わりは見えない。