各ガーデンで連日催されるイベントは、商業施設の集客を増やすだけではない。買い物客が地域コミュニティの活動に興味をもつきっかけになったり、ガーデンを利用したコミュニティ同士が交流を深めるきっかけになったりしている。「これまでと違うタイプの参加者にアプローチできた」「ここでの出会いがきっかけで、別の団体のイベントに呼ばれるようになった」といった声がNPOから聞かれた。

 デパートといえば、都会に立地していても年々の売り上げ減少が話題になるような、「明るい未来を描き難い業態」の一つだ。そんな厳しい業態であっても、NPOや市民サークルといった非営利な地域コミュニティとのネットワークさえデザインできれば、非営利と営利が共存共栄する「デパートの未来型」が描きだせる。そして企業と地域コミュニティ双方にとっての価値を生み出せることを、マルヤガーデンズの事例は示している。

異質な才能が組み合わさって
スピード感のある商品開発

 NPO法人「農家のこせがれネットワーク」(こせがれネット)は、実家が農家でありながら、今は企業などで働いている農家の“こ(子)”、“せがれ(倅、娘を含む)”を帰農させ、日本の農業を再生することを目指して活動している。同法人が発行するメルマガの読者は3500人。北海道、宮城、関西などに地方ネットワークも擁する。

 こせがれネットの組織の特徴は、内外の境界があいまいで、構成員が多様なことだ。就農、未就農のこせがれが集まり、すでに就農した人の発表を聞いて交流を深める「農家のこせがれ交流会」こそ参加資格は限られているが、ビジネスパーソンが朝の一時間を活用して「食と農」などについて学びを深める「丸の内朝大学」の「食と農クラス」、こせがれを含む新規就農者が、自分たちが作った農作物をふるまう「こせがれBBQ」など、農業に関心さえあれば誰でも参加できる企画が、いくつも用意されている。こせがれであってもなくても、こうしたゆるやかな催しに一度でも参加すれば、こせがれネットの一員とみなされる。

 その結果、こせがれネットの活動には多彩な人材が集まることになる。3月、東京・六本木の「六本木農園」というレストランで開催された活動3周年記念パーティーでは、農家のこせがれに限らない新規就農者、農業関連のビジネスに携わる人、行政関係者、メディア関係者など、多様な人々が交流を深めていた。

 こせがれネットの代表理事CEO、宮治勇輔氏は、こせがれを含むこれからの農業経営者は、農協などが指示する規格に沿った作物を、ただ作るだけの純粋な生産者ではなく、「農業プロデューサー」になる必要があると説く。農業プロデューサーは、自らの作物のブランドを構築し、販路も開拓していく。生産(1次産業)だけではなく、加工品製造(2次産業)、農業体験や飲食店などのサービス業(3次産業)も加えた、いわゆる「6次産業化」を企画できる人材に成長していくべきだというのだ。

 組織の境界があいまいで構成員が多様なことは、異質な才能が組み合わさることによって新たな製品・サービスの企画を容易にする効果を上げている。例えば東海中部のこせがれ地方ネットワークでは、ホウレンソウ農家とケーキ屋のこせがれが出会い、海外の顧客からも高い評価を得るケーキの開発を実現した。宮城ではコメ農家のササニシキ、養鶏農家のタマゴ、染物業者の手ぬぐいなどを詰め合わせたギフトボックスを売り出している。宮治氏は、ネットワークで新たな製品・サービスの開発を進めることについて、低コストでスピードがあり、参加者が互いに顧客をシェアできることがメリットだと指摘する。