「民主派」と「独立派」を
同一視して排除

 さらにいえば、民主派の若者を「香港独立派」と同一視して排除したことも中国共産党の「失敗」だったといえる。よく誤解されるのだが、民主派と独立派はまったく違うからだ(第116回・P.2)。民主派は、「一国二制度」で香港の民主主義を守ることを志向するが、独立派は、「本土主義」と呼ばれる「香港ナショナリズム」を思想的な基盤としている。

 香港は、1947年に人口約170万人だったのに対し、91年には552万人まで増加した。これは、自然増ではなく、その大多数が中国大陸で起こった反革命鎮圧運動、大躍進、文化大革命や飢餓から逃げてきた人たちだ。この大陸から移住してきた人たちには、「香港人」としてのアイデンティティーがなかった。だが、その子どもたちは、香港で生まれ育ち、香港人としてのアイデンティティーを持つようになった。この若者たちから生まれたのが「本土主義」というナショナリズムだ。

 本土主義は、中国大陸の人々の急激な経済成長による、香港への莫大な投資に反発する。香港の名物ともいえる高層マンションに住むのは、大陸の金持ちばかりとなっている。共産党幹部によるマネーロンダリング(資金洗浄)により、ダーティーマネーが広がっているという噂もある。

 また、いわゆる「爆買い」という言葉で表現される大陸の人々の消費行動にも頭を悩まされてきた。さらに、香港社会は、世界一貧富の差が激しいとされている。リッチな人が多い半面で、月収500円という人も少なくない。これらが、急激に経済成長する大陸への反発につながっている。

 だが、本土主義の具体的な行動は問題が大きい。「中国資本のモノを買わない」「高級マンションを購入しない」「大学内にスーパーはいらない」「スターバックスはいらない」「多国籍企業に入らず、社会的企業や非政府組織(NGO)を立ち上げる」などだからだ。これが、香港のためにならないのはいうまでもない。

 そもそも香港は、英国統治下で「自由民主主義」を基盤として発達し、アジアの「資本主義」の中心地の1つとなってきた。この自由民主主義を守ることが、民主派の目指すことだ。それに対して、香港人が質素倹約の穴に引きこもる独立派の本土主義は、自らの最大の長所である「資本主義」を捨てて、大陸人の下層階級の地位に自らをおとしめることになるのだ。