現在、共働き家庭は1000万世帯を超え、なおも増加中。出産後に職場復帰する女性も増えています。一方で、夫が家事を手伝ってくれない、職場の理解が得られない…などの悩みを抱えている女性も少なくありません。今回はシリーズ累計131万部突破のベストセラー『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一さんに、共働き家庭の味方を増やす「伝え方」を教えてもらいました。(構成/伊藤理子)
仕事と家事・育児を両立するための、伝え方のコツ
男性の「家事・育児に費やす時間」が話題になっています。内閣府によると、6歳未満の子どもを持つ家庭において、夫が家事・育児に費やす時間は1日当たり平均で1時間23分。米国の3時間10分、スウェーデンの3時間21分など、ほかの先進国とくらべて低水準にとどまっています。
これに対して、妻が家事・育児に費やす時間は、実に7時間34分。妻が抱える負担は非常に大きく、夫への不満を溜め込んでいる人も少なくないようです。
「伝え方」の技術は、働くママの負担を減らすうえでも力を発揮します。今回は「お母さんおたすけの伝え方」、夫を巻き込み、職場での味方を増やすための「伝え方」をご紹介します。
家庭で夫を巻き込む伝え方
【Case1】夫にもう少し家事を手伝ってほしい
家のことを何もしてくれない夫。せめてゴミ出しぐらいしてくれてもいいのに、気に留める様子もない!日々の不満がどんどん溜まると、ついケンカ腰で、
×「ゴミぐらい捨ててよね!!」
と言いたくもなりますが、このようにキツく言われると誰しも嫌な気持ちになるもの。「時間ないからムリ」と返されて、本格的な口喧嘩に発展してしまうかもしれません。
そんなときは、このように伝えてみてください。
〇「ゴミ捨てと食器洗いだったら、どっちがいい?」
これは「選択の自由」という技術を使った伝え方です。人は、AとBどちらがいい?と選択肢を提示されると、思わずどちらかを選んでしまうものです。普段動いてくれない夫も、このように言われると「どちらもイヤ」とは言いづらいもの。「じゃあゴミ出しするよ」などと手伝ってくれるようになるでしょう。
もちろん、「こう伝えれば100%手伝ってくれる」というわけではありません。ただ、伝え方を工夫するだけで、手伝ってくれる確率をぐんと上げることができるのです。
「選択の自由」…どちらを選ばれてもいいように、自分のやってほしいものを2つ並べるのがポイント。最終的に相手が選ぶので、押し付けられた感が少なくなる効果もあります。
【Case2】休日にごろごろしている夫に、掃除をしてほしい
休日なのに、朝からずっとごろごろ…家事や育児を手伝ってくれる気配すらない夫。平日はともかく、休日ぐらい協力してほしい!そんな悲痛な妻の叫びをよく耳にします。ただ、だからといって、
×「休みの日くらい、掃除を手伝ってよ!」
と直球で言うと、「せっかくの休みなのに…」と休暇を邪魔されたように感じるかもしれません。もちろん、やってくれる人もいるでしょうが、「面倒くさいけれど、妻がうるさいからしぶしぶ」になってしまい、掃除もおざなりになってしまいそうです。
こんなときは、このように伝えてみてください。
〇「あなたがやるとすごくきれいになるから、リビングの掃除機掛けをお願いできる?いつもありがとね!」
これは、伝え方の技術「認められたい欲」と「感謝」の2つを使っています。人は認められると、その期待に応えたくなるもの。「あなたがやるときれいになる」と言われると、認められたと嬉しく思い、進んで掃除をしてくれるようになるでしょう。さらに「ありがとう」と感謝を伝えるとより効果的。人は、ありがとうと感謝されると、お願いに対してノーと言いづらくなるのです。
男性は、一度物事を始めると徹底的にやり切る人が多いので、ピカピカになるまでリビングを磨き上げてくれるかもしれませんよ。
「認められたい欲」…人は期待されると、その通りの成果を出したくなるもの。ビジネスに家族に、効果絶大です。
「感謝」…感謝を使えば仲間意識が生まれます。相手も断りにくくなり、面倒なたのみも聞き入れてもらいやすくなります。
【Case3】義父に孫の面倒を見てほしい
休日は溜まりに溜まった家事をフル回転でこなしたい!少しの間でいいから、近所に住んでいる義理の両親に子どもの面倒を見てほしいけれど…なかなかお願いしづらいものですよね。
×「お義父さん、子どもたちを公園に連れて行ってもらえませんか?」
と伝えるのもアリだとは思います。かわいい孫と遊べるのは、おじいちゃんとしては嬉しいもの。ただ、人によっては「孫はかわいいけど、相手をするのは疲れる」と感じているかもしれません。決して楽ではない孫のお世話も、このように伝えれば、気持ちよく面倒を見てくれるようになるでしょう。
〇「虫や植物のことを教えてくれるおじいちゃんだと、子どもたちが喜ぶんです。幼稚園でも、おじいちゃんから教わったことを自慢しているみたいで…。また公園に連れて行ってやってくれませんか?」
これは「あなた限定」と「相手の好きなこと」、2つの技術を使った伝え方です。「おじいちゃんだと喜ぶ」と相手を特別扱いすると、相手は話に乗りやすくなります。義父のほうから自主的に「孫を公園に連れていきたい!」と思ってくれることでしょう。さらに、「幼稚園で自慢している」というのは、義父にとって嬉しいこと。「孫のためなら」と、気持ちよくお願いを聞いてくれるようになるはずです。
「あなた限定」…あなただけ特別、と言われると、人はつい動いてしまうもの。じぶんだけ選ばれたという優越感から、話に乗りたくなるのです。
「相手の好きなこと」…基本でありながら、最強。人に好かれる伝え方ナンバー1。「相手の好きなこと」をもとに考えるので、好感をもたれながら、こちらの希望を通すことができます。