安倍首相から軽く見られてしまった2%の物価安定目標参院決算委員会で答弁する安倍首相 Photo:JIJI

2%の物価目標は一応の目的
「本当の目的」ではない?

 安倍晋三首相は6月10日、参院決算委員会で国民民主党の大塚耕平氏の質問に答え、「日本銀行の2%の物価安定目標は、一応の目的だが、本当の目的は、たとえば雇用に働きかけ、完全雇用を目指していくこと。その意味で金融政策も含め、目標については達成している」という趣旨の発言をした。

「デフレ脱却」は安倍政権のスローガンであり、そのデフレ脱却とは2%の物価目標を達成することではなかったのか、と思う人もいるかもしれない。しかし、安倍首相のこの発言は、政府のこれまでの考え方と矛盾するものではない。2013年1月に出された「政府・日本銀行の共同声明」(いわゆるアコード)で確認してみよう。

 まず共同声明では、政府と日銀が「デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、……政策連携を強化し、一体となって取り組む」と謳われている。そして、具体的な政策連携の内容として、日銀には物価の安定を実現することが求められた。その上で、日銀は「物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする」ことを約束した。つまり、2%の物価目標は、日銀がその責任において決定したものであり、政府の目標ではない。

消費増税で政府はアコード卒業
金融政策の出口はまだ先

 一方、政府が日銀との政策連携において約束した目標は、「財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」ことだ。この目標がしっかり達成されているとは思えないが、政府としては遅ればせながら消費税率を10%に引き上げることで、約束を果たしたというスタンスなのだろう。

 冒頭の安倍首相の発言から読み取れるメッセージは、以下のようなものだ。

①2%の物価目標はなかなか達成できないが、これは日銀が掲げた目標であり、政府の政策を縛るものではない
②物価が下がっておらず、完全雇用を達成しているのであれば、デフレ脱却だ。予定通り消費税率を10%に上げる