所得格差は日本3.4倍に対し、シンガポールは9.7倍!
グローバル化が浸透する社会では、あらゆる分野で絶えずグローバルな競争にさらされます。「グローバル社会の進行」→「早期選抜、勝ち負けの明確化」→「所得格差拡大」という構図です。その証拠に、国民の所得格差を比較してみると、最上位20%と最下位20%の平均所得比率は日本が3.4倍であるのに対し、シンガポールはなんと9.7倍にもなります(出所:Richard Wilkinson, "How economic inequality harms societies")。
このような環境は、勝ち組企業にとってはこのうえなくありがたいものです。
たとえば、シンガポールでは国を挙げて将来有望な産業を誘致しようとしています。シンガポール政府はこういったプロジェクトを主導することに長けており、世界各国の「その分野でナンバーワン」の企業をくっつけて外国に売り込みをかけるわけです。もしもあなたがこうした産業に属していれば、政府の後ろ盾を得て優位にビジネスを進めることもできるでしょう。
例をひとつご紹介します。
シンガポールは淡水が少ないため、以前から海水の淡水化についての研究が進められてきました。また、この分野で優れた技術を持つ企業を誘致し、自国のために必要な技術だとして投資・育成も行ってきました。
……と、ここまではよいのですが、これで「めでたし、めでたし」と終わらないのがシンガポールのしたたかなところ。淡水化技術が自国で実現すると、今度はそれらを持って外国に売ることを企画してしまうのです。現在、シンガポールの水処理会社は日本の企業と手を組み、インドで淡水化プラントを受注したりしています。
このようなプロジェクトに参加する条件はただひとつ、「優れた技術やノウハウを持っていること」。国籍は関係ありません。これが日本なら、プロジェクトに参加する日系企業は自国である日本政府と協力することが期待されそうなものですが、このあたりはシンガポールのほうが格段に商売上手です。
このことからもおわかりのように、強者にはさらに新しい機会が与えられ、ますます強くなれる仕組みをつくっているのがシンガポールという国、ひいてはグローバル社会というものです。グローバル社会では、国家も企業も関係なく強者がタッグを組み、どんどん強くなっていきます。