守るべきただ1つのルールは
「下がった時に売らないこと」

 例えば、2002年から運用を始めていたとしても、2008年のリーマンショック時には世界的に株価は3~4割下落した。株価が急落すると誰しも不安になるもので、この時も多くの加入者がそれまで保有していた株式投資信託を売却した。筆者はその頃、確定拠出年金の運営管理業務をやっていたため、コールセンターに不安を訴える声と共に売却指示をする顧客が多かったことをよく覚えている。

 ところが、リーマンショック後2~3年たつと、株価は多くの市場で下落前の価格を上回ってきている。したがって、下落した最も安い時点で売却し、そのまま定期預金に入れてしまうと、その後の回復過程においても全くメリットを得ることができなかったということになる。つまり、下がって損をした状態で、資金をほとんど金利のつかない預金に固定してしまったからである。逆に、リーマンショック時に、特に何もせず今日まで放ったらかしておけば、前述のように2倍程度になっているのである。

 ここからいえることは、確定拠出年金のように長期にわたって積み立てながら運用を続けていく場合、絶対にやってはいけないことは大きく下落した時に売ることである。

 そもそもいつ株が下がるか、あるいはいつ上がるかは誰にもわからない。だからこそ、市場の動きを予測して売買をしても、あまり成功する確率は高くないのだ。それよりもむしろ長期に積み立てを続けて、“それをやめない”、“不安にかられて途中で売らない”ということが最も大事なことだ。先ほどの図2を見てもわかるように、日経平均株価が高値を付けた1980年代の終わり頃から日本の株式で積み立てを始めたとすると、30年たってもまだ日経平均は当時の高値を下回ったままであるにもかかわらず、時価は積立額の1.6倍になっている(2018年9月末時点)。

 企業型の場合、投資に関心を持っている人は少数派であり、確定拠出年金が始まってもほとんど興味がなかったからこそ、逆に放って置くことができたのかもしれない。ところがiDeCoの場合は、自らの意思で始めた人が多いからこそ、そして多くの人がまだ始めたばかりだからこそ、今の時期に声を大にして言っておきたい。守るべきたった1つのルール、それは「下がった時に売らないこと」である。

(経済コラムニスト 大江英樹)