モチベーションは現代社会の最大の資源
他者からモチベーションを引き出すには「意味」が重要であり、「意味」の与え方によって人の働き方には雲泥の差が生じてしまうということになれば、この「意味」を引き出すニュータイプの能力こそが組織の競争力を左右することになります。
特に、これから先、多くの組織において中核をなすことになるミレニアル世代の人々は「意味」の有無に対して極めてシビアな評価視点を持っています。
たとえばコンサルティング会社のデロイトが2015年に世界29カ国のミレニアル世代(1980年~2000年までに生まれた世代)を対象に行った調査によれば、就職先を選ぶ基準として、給与でも製品でもなく、「その企業が事業を行っている目的」を重視すると答えた回答者が6割を超えています(*5)。
また、イギリスのガーディアン紙によるミレニアル世代を対象とした調査では、高い給料をもらうよりも人のためになる仕事をしたい=44%、勤務先が社会に貢献していると働く意欲が増す=36%となっています。
この社会貢献志向ともいえるミレニアル世代の傾向はリクルートワークス研究所による調査でも指摘されています。つまり、彼らは職業選択にあたって「意味」を極めて重視している、ということです。
このような傾向について「最近の若者は草食系で元気がない」という指摘をする年長者もいるようですが、これは自分の枠組みでしか世界を評価できない典型的なオールドタイプのコメントと言えます。
そうではない、むしろ「社会をより良い方向に変化させたい」というエネルギーのレベルはミレニアル世代の方が高く、その発露の仕方や方向性が違うということなのです。
現在の年長者がまだ若者だった1980年以前の時代は「モノ」が希少で「意味」が充足している時代でした。一方で現代という時代は先述した通り「モノ」が過剰で「意味」が希少になっています。
つまり、いつの時代にあっても、その時代の「若者」というのは、常に「その時代に足りないもの」についてハングリーなだけだということです。モノが過剰に溢れる一方で、意味が枯渇している社会にあって、若者が「モノ」に対してハングリーになれないのは当たり前のことです。
このような時代にあって、ひたすらに金銭やモノを褒美としてチラつかせながら、意味を与えることもなく他人をコントロールしようとするのは典型的なオールドタイプのマネジメントパラダイムであり、今後は有効に機能しません。
一方で、ニュータイプは「意味」を明確にします。常に大きな背景として「意味」を示しながら、その前景にクリアすべきタスクと目標を示すのがニュータイプなのです。
(注)
*5 https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/global/Documents/About-Deloitte/gx-millenial-survey-2016-exec-summary.pdf