それはともかくとして、生坂先生率いる千葉大学医学部付属病院総合診療科は、「どこに行っても診断がつかない、臓器横断的な見方でないと診断がつかないような、隙間に落ち込んでいる病気、あるいは複合的な原因が合わさり、診断がつきにくい病気を診る、医療の駆け込み寺的な診断科」として、自費診療のセカンドオピニオン外来の形で稼働。紹介状を持つ全国の患者を受け入れている。

 当初は保険診療で受け入れていたが、あまりにも患者が殺到するのと、1人の患者に対して3~4人の医師が問診し、十分な時間をかけて行う診断体制を維持するにはお金がかかり、患者が増えるほど病院が赤字になる事態を改善するためだ(近隣から訪れる急性疾患の患者は引き続き保険診療で受け入れている)。

「当科が診ているのは数年間、短くても数ヵ月、いろんな症状があって、どこに行っても分からない、という患者さんです。痛み、しびれ、めまい、ありとあらゆる症状を抱えた患者さんがたくさんいらっしゃいます。そこを丸ごと診る。

 時折、“丸ごと診る”ことを、安易に、おおざっぱに診ると勘違いされている節がありますが、私は、それは許容しない。丸ごととは、社会的ストレス、メンタルの影響、身体的な異常等々複合的な要素を合わせて診るということであり、我々はそのなかで何割がバイオか心理かなど切り分けて、正確に整理しています。これがものすごく大変です。

 それぞれ何割か割合を決めて、中心的な症状に対して最も大きな原因となっているものに対して、まず介入する。複数の要素をいっぺんに改善するのは難しいからです」

 一般的に「自分を苦しめている病気は1種類」という認識がありがちだが、実は高齢になればなるほど複数の臓器が衰え、病気になっていることが多いし、若者の場合はストレス社会の中で、心理的、社会的要因で症状が形成されていることが普通にある。そういう意味でも、総合的に診る総合診療科的視点は、今後ますます必要になるだろう。

「一方、診断推論は、正しい診断ができるよう筋道を立てて考えるトレーニングを行う学問です。ある症例について、『こういうふうに考えた』とプレゼンで頭の中をさらしてもらい、それに対して『そこはおかしいよね』『ここでボタンの掛け違いが起こっているよね』など修正しながら、正しい診断ができるようにトレーニングを重ねる。要するに、名医を名医で終わらせず、名医の頭の中を共有するために必要な学問が診断推論学です」

 例えば若き日の生坂先生が、「難病の誤診」を見抜けたのも、振り返ってみると「勘ではなかった」と言う。